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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第16章 何度でも、君に恋をする



「もうすぐ卒業だなんて……あっという間だね」
「うん、そうだね」
「寂しいなぁ……」

三月十日に行なわれる卒業式まで、気付けばもう一週間をきってしまった。

たったの一年しか同じ学校に通えないなんて、こんな時二歳差の壁が大きく感じる。

「どうせ毎日会えるでしょ」
「そうだけど……」

冷めた顔をしてチラリと私を見る彩奈。

確かに毎日会える。だってお隣さんだし。

相変わらず夜中に私のベッドへ忍び込んでくるひぃくんのお陰……?か、私が目覚めて一番最初に目にする人物は毎朝ひぃくんだ。
きっとそれはこれからも変わらない。

だけど、同じ学校に通ってお昼には一緒に昼食をとる。そんなささやかな時間が私にはとても大切に思えた。

「彩奈は寂しくないの? もう学校でお兄ちゃんと会えなくなるんだよ? 」

最初からいなかったのと、途中からいなくなるのとではだいぶ違う。

……今まで一緒に過ごしてきた場所に、もう大好きな人の姿がなくなるのだ。

「うん……寂しいけど。でも仕方ないじゃない」
「そうなんだけど……」

彩奈の目線を追いかけるようにして窓の外を眺めた私は、大きく溜息を吐くと窓枠に置いた両手に顎を乗せる。

「……おばさん達、明日だっけ? 帰ってくるの」
「うん……そうだよー」

両手に顎を乗せたまま、気の無い返事をする。

そんな私をチラリと横目に見た彩奈は、小さく溜息を吐くと口を開いた。

「何よそれ、嬉しくないの? 一年振りでしょ? 」
「嬉しいけど……」

……勿論、凄く嬉しい。

お兄ちゃんの卒業式に出席する為、一時帰国をするお母さん達。

一年振りに会えるのだから嬉しくない訳がない。
だけど、今の私はそれどころではないのだ。

今までにも小学校中学校と経験してきたはずなのに、ひぃくんが卒業してしまう事がこんなにも寂しいなんて……。

恋とは恐ろしい魔法だ。

「……寂しいなぁ……」

両手に顎を乗せたままそう小さく呟いた私は、溢れそうになる涙をグッと堪えると大きく鼻を啜《すす》ったーー。


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