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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第16章 何度でも、君に恋をする



「おばさん達に会えるの久しぶりだなー。楽しみだねー、花音」

私の手を握って歩くひぃくんは、そう言ってニコニコと微笑む。

「うんっ、楽しみ! 」
「もう帰ってるかなー? 」
「お昼前にはこっちに着くって言ってたから、もう家にいるんじゃないかな? 」
「そっかー。早く会いたいなー」
「そうだねー、早く会いたいねー」

お互いの顔を見て嬉しそうにニコニコと微笑む私達。

そんな私達の横を歩くお兄ちゃんは、チラリとひぃくんを見ると口を開いた。

「何でお前が俺以上に嬉しそうにしてるんだよ」
「だってー。花音のお母さんとお父さんだよ? そりゃ嬉しいよー」

フニャッと微笑んで小首を傾げるひぃくん。

「……俺も息子だよ。綺麗サッパリ忘れてくれやがって……」

そう小さく呟くと、細めた目でジロリとひぃくんを見たお兄ちゃん。

何だかそんなお兄ちゃんが憐《あわ》れで、私は引きつった顔でアハハッと渇いた笑い声を漏らす。

「ごめんねー。お兄ちゃんっ」

ニッコリと微笑んでそう言ったひぃくんに、お兄ちゃんは口元をピクリとヒクつかせる。

「……お兄ちゃんて呼ぶな。俺はお前の兄貴になった覚えはない」
「拗ねないでよー、お兄ちゃん」
「……」
「もう忘れないから。ごめんね? お兄ちゃん」
「……もういいからお兄ちゃんて呼ぶな。そして俺の事は永遠に忘れてくれ……」

ウンザリとした顔でそう言ったお兄ちゃんは、ひぃくんから視線を逸らすと隣にいる彩奈と話しはじめる。

「拗ねちゃったねー、翔」

私に向かってフニャッと笑って小首を傾げるひぃくん。

「う、うん……そうだね」

拗ねた……?
というか、面倒になっただけでは……?

そうは思ったものの、私の横で幸せそうに微笑むひぃくんを見て、私は痙攣《ひきつ》った顔で笑顔を作ると小さく笑い声を漏らした。





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