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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第4章 君はやっぱりヒーローでした


顔を俯かせてビクビクとしていると、大きく溜息を吐いたお兄ちゃんが口を開く。

「響が一緒だったんならまぁ、いいよ。もう嘘は付くなよ?」

……え?いいの?
だってひぃくんだよ?
私は全然よくないよ?

何だかんだお兄ちゃんはひぃくんを信頼しているらしい。昔からそう。
最終的には、ひぃくんが一緒ならいいと言ってくれる。

何で?
……何でかはわからないけど、とりあえずこの場は助かった。

ひぃくん、たまには役に立つね。
チラリとひぃくんを見る。

「わかったの?花音」
「はっ……はい!わかりました」

ひぃくんを見ていた私は、お兄ちゃんの声に驚いてピシッと背筋を伸ばすとそう答えた。
私の返事にニコリと微笑むお兄ちゃん。

良かった……。
安心した私は、再びお弁当を食べようと視線を下げる。

あっ、お箸落としたんだった……。
どうしよう、食べれない。

地面に転がるお箸を見つめていると、私のすぐ横からお箸の握られた腕が伸びてきた。

横を向くと、ひぃくんがニッコリ笑って口を開く。

「食べ終わったから、使っていいよ」
「……ありがとう」

私は素直にひぃくんからお箸を受け取ると、食べかけだったお弁当を食べ始めた。
すると、やけに隣から視線を感じる。

何だろう?
そんなに見られると食べにくい。

「美味しそうだねー」

隣から聞こえる声に、小さく溜息を吐く。

もう……。
まだ食べ足りないからって、そんなに見つめないでよ。
言ってくれれば分けてあげるのに。

「食べる?」
「えっ! いいの?!」

嬉しそうにキラキラと瞳を輝かせるひぃくん。
子供みたいなその姿に、思わずクスリと笑みが溢《こぼ》れる。

「いいよ」

私は笑顔でそう答えると、ひぃくんが好きな目玉焼きをお箸で掴んだ。
そしてそのお箸をひぃくんの方へと差し出す。

「いただきまーす」

そう言ってゆっくりと近付いてくるひぃくんの顔。

「えっ……」
「響っ!」

焦るお兄ちゃんの声。
ポトリと地面へ落ちる目玉焼き。

ひぃくんは……
私の頬をパクリと食べた。

呆然と固まる私は、ひぃくんを引き剥がしたお兄ちゃんにゴシゴシと頬をこすられる。

お兄ちゃん……。
ひぃくんこんなだよ?
本当にひぃくんでいいの……?
……何で?

そんな事を思いながら、こすられ過ぎてヒリヒリと赤くなった頬をそっと手で抑えたーー。

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