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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第4章 君はやっぱりヒーローでした



お昼休み、屋上でお弁当を食べていると隣にいるひぃくんが口を開いた。

「昨日は楽しかったねー。また一緒にスパ行こうね、花音」

ニコニコと笑顔で話すひぃくん。

そ、それは今言って欲しくなかった……。

昨日私は、彩奈と二人で映画に行くと嘘を付いて家を出たのだ。
チラリとお兄ちゃんの様子を伺った私は、握っていたお箸をポロリと落とす。

私の目の前には、お兄ちゃんではなく鬼がいた。

「花音……昨日スパに行ったのか?」

固まったまま何も答えない私を見ていたお兄ちゃんは、私の隣にいるひぃくんへと視線を移す。
すると、その視線に気付いたひぃくんが話し出した。

「……そうだよ。花音たら裸で歩いてたから……ビックリしちゃったよ」

ーーー?!

ひぃくんの言葉に、ビシッと固まる私とお兄ちゃん。

ひぃくん……ビックリなのは私だよ。
私はちゃんと水着を着ていた。
裸でなんて歩いていないよ。

「はだ……か……?」

目を見開いたお兄ちゃんが、ゆっくりと頭を動かすと驚きに見開かれた瞳で私を捉えた。

「ちっ……違うよっ、お兄ちゃん!私ちゃんと水着着てたよ?!」
「じゃあ……スパには行ったんだな?」

あぁ、何て事だ……。
私はスパに行った事を認めてしまった。

せっかく色々考えて上手く嘘が付けたと思っていたのに。
全部ひぃくんのせい。
何でよりにもよってお兄ちゃんの前で言うのよ!

私がキッとひぃくんを睨みつけると、私の視線に気付いたひぃくんは「また行こうねー」なんてニコニコしている。

なんて呑気な人なんだろう……。
今の状況わかってる?
私今、お兄ちゃんに追い詰められてるんだよ?

相変わらずニコニコしているひぃくんを見て、諦めた私はお兄ちゃんの顔を見ると口を開いた。

「嘘付いてごめんなさい……」

今にも消えてしまいそうな程に小さな声で謝る。
だってお兄ちゃん怖いんだもん。

味方につければこれ以上にないくらい心強い。
だけど、敵ともなれば話は別。
とんでもなく恐ろしい鬼だ。美しい鬼。

お願い……鬼にならないで。


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