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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第9章 君は変な王子様



「君可愛いねー。この後一緒に遊びに行かない?」

目の前でニッコリと微笑む、他校生らしきチャラそうな男の子。

「あ、あの……ご注文は……?」
「んー。じゃあ、君」

ニコニコと微笑む男の子に、笑顔を引きつらせる私。

店番に出てからというもの、さっきからずっとこんな調子。
誰よりも露出度の高い衣装を着た私は、きっと物凄く軽い女だと思われているに違いない。

「写真撮っていい?」

そう言って携帯を取り出した男の子。

「はーい、撮影は禁止でーす」

男の子が私を撮影しようとした瞬間、携帯をガシッと掴んでそう言った志帆ちゃん。

そのままクルリと私の方を向くと、ニッコリ笑って口を開いた。

「花音ちゃんは、入り口で呼び込みやってきて」
「……えっ?! 呼び込み?! ムリムリムリムリ!」

慌てて手を横に振ると、志帆ちゃんは私の肩に手を置いてニコッと笑う。

「花音ちゃんが立つと人が集まるから。一位目指して頑張ろうね!」

気合い満々の顔でそう告げた志帆ちゃんは、私に看板を持たせるとサッサと教室から閉め出した。

えー……。

突然廊下に出され、呆然と立ち尽くす私。
看板を見ると【美味しいケーキ 食べに来てね】と書かれている。

「ーー花音ちゃん?」

突然聞こえてきた声に振り向くと、そこには斗真くんがいた。

「ウサギ可愛いね」

私の目の前まで来た斗真くんは、そう言うとニッコリと微笑む。

「えっ?! あ……凄く嫌なんだけどね、仕方なくて……」
「何で? 凄く可愛いよ」

ニコニコと微笑みながら、お世辞を言ってくれる斗真くん。

なんて優しいんだろう……。

「昨日行けなかったから、行きたかったんだよね。今空いてるかな?」
「あ、うん。二人なら入れるよ」

斗真くんの横にいる友達にチラリと視線を移すと、私はそう言って教室へと案内をする。

「呼び込み頑張ってね」
「うん、ありがとう」

笑顔で小さく手を振った私は、教室の扉を閉めながら掛け時計をチラリと見た。

……よし、まだ大丈夫。

今日はひぃくんと休憩時間が被る為、一緒にお昼を食べようと誘われている私。
約束の時間まであと三十分。

それを確認した私は、なんとか三十分だけ気合いで乗り切ろうと覚悟を決めた。




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