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風に吹かれて

第3章 愛されるよりも

子供時代や思春期を振り返って見ても、誰かのファンになるということが、ついぞなかった。
すっかりイイ年の大人になってから青い沼にドボンと落ちてしまい、一番びっくりしたのは自分自身である。

ドボン。

いやむしろ、ズブズブとハマって後戻り出来なくなったという方が正しい。

なんで私が。
何故この人。
どうしてこんなに。

ふと気がついたらそういう状態で、現在に至る。

そもそも昔からテレビをそんなに見ない。
映像が流れているとつい座って落ち着いて見てしまうので、行動が制限されるから、BGVよりBGM派。

なので情報源と言えば、たまたま目にしたテレビに映る彼らと、耳に入ったラジオや有線放送、CDショップやレンタルビデオ店で陳列されている作品のパッケージ、書店で見かける雑誌の表紙、くらい。

それでも沼に引きずり込む彼の魅力。
恐ろしい子…。



本格的にハマったのは離婚してから。

それまでにも、可愛いなあ、ワチャワチャしてて和むなぁ、とは思っていた。
けどお金を払うようになったのは一人になってから。

やっぱり人間て、誰かを愛さないではいられない生き物なのかなぁ、と思う。



今でも良く憶えているが、ハマる前のある日、ドライブがてら一人で神社へお参りに行った時。
頂いたおみくじに、大きく一文字「愛」と書かれていた。

愛…?

あの~、神様、何か別の人と間違ってないですかね。
ナイナイ(≧▽≦)
私の愛は離婚した時に死にました。
もう十分頂いたし、切ないのも、苦しいのも間に合ってます。

と思ったのに。
後に、あのおみくじは彼のことだったのかぁ!!!と思い至って驚愕した。
神様、お流石でございます。



んでも、ハマってから、切ない、とか、苦しい、はそんなにないですね。

可愛い、カッコイイ、素敵、ますます惚れた、よだれ、はあるけど。

あと、痩せたな、忙しいのかな、元気かな、食べてるかな、眠れてるかな、とか。

楽しそうだな、嬉しそうだな、笑ってるな。

辛そうだな、しんどそうだな、大丈夫かな、とか。

お茶の間で見ているだけでなく、何か応援でしてあげられることはあるかな、って。



これが「愛」なのかどうなのか、正直分からないけど。
神社の神様がそう仰ったのだから、これもきっと「愛」なんでしょう。

お誕生日から3日。

あの人の願いが叶いますように。

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