森の中
第6章 6 思い出
それから二人は何度も会い気が付くと離れることが出来ない関係になっていく。聡志は山岳関係の雑誌への寄稿が主のルポライターであった。気ままな仕事ぶりではあったが君枝と出会ってから精力的に他のジャンルへ売り込みを始めた。
慎ましく二人で暮らしたまに聡志は山に登るのを君枝は待つ生活を送る。彼は絶対に約束を破ったことがなかった。帰る日時が遅れたことは一度もない。
そして瑠美を妊娠した時、彼は危険な登山はやめ山歩き程度にすると約束してくれた。
しかし瑠美が生まれる二か月前、エベレスト登山の公募隊に参加し原稿を書かないかという話が来た。聡志がその話を受けたとき君枝は反対しなかった。彼から山を取り上げることなどできなかったからだ。ただ、その登山が彼の最初で最後の約束の反故となった。
――遺体は聡志の家族が引き取り、法的に何の関係もない君枝には赤い小石と瑠美だけが残った。
慎ましく二人で暮らしたまに聡志は山に登るのを君枝は待つ生活を送る。彼は絶対に約束を破ったことがなかった。帰る日時が遅れたことは一度もない。
そして瑠美を妊娠した時、彼は危険な登山はやめ山歩き程度にすると約束してくれた。
しかし瑠美が生まれる二か月前、エベレスト登山の公募隊に参加し原稿を書かないかという話が来た。聡志がその話を受けたとき君枝は反対しなかった。彼から山を取り上げることなどできなかったからだ。ただ、その登山が彼の最初で最後の約束の反故となった。
――遺体は聡志の家族が引き取り、法的に何の関係もない君枝には赤い小石と瑠美だけが残った。