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森の中

第8章 8 街の中

た。 「さあーて、どの娘にしようかなあ。細いのがいいかねえ。うちのかあちゃん太っちゃってさあ……」

 女の子の写真を眺めながら岸本は赤ら顔を綻ばせて唸っている。

「俺は誰でもいいよ」

 冬樹が言うと岸本は厳しい顔で耳打ちした。

「おい。フリーだとすごいのが来るぞ」

 笑って冬樹は、
「みんな大差ないよ」と、言った。


 選び終わった岸本と冬樹は隣同士のブースに案内された。賑やかな音楽が流れ、薄暗いがちらちらと色々な光が乱舞して目に花吹雪のように射してくる。

(山と真逆なところだな)

背中から岸本の「お前も愉しめよ」と朗らかな声がかかる。


 適当に相槌を打って座っていると、 「クミでえーす」 と、明るい声がかかる。

 名前に反応して見上げると豊満以上の立派な体躯で、丸い顔をした上半身裸にミニスカートをはいた女が立っていた。
 どすんと冬樹の隣に座り、すぐに膝から太腿を撫で上げ、
「眼鏡がすてきね。すっごい私の好み。今日はいっぱいサービスしてあ・げ・る」
 と、愛嬌のある笑顔を見せて言った。

(岸さんなら『すごいの』って思うんだろうか)

少し愛想笑いをして冬樹は「お手柔らかに」と、言った。

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