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森の中

第9章 9 決別

 小屋を出て車に遺骨を取りに戻り冬樹についてぐるりと山を回りながら登った。
時折「大丈夫?」と気にかけてくれることが嬉しかった。
 しばらくゆるい傾斜だがシダ植物が茂る中を歩くと冬樹が
「そこだよ」
 と、指をさした。

 ぱっと視界が開けて山の斜面の下のほうに町が見渡せた。冴えわたる冬の中、遠くにくっきりと水平線も見える。

「素敵……」

 瑠美は母が望んだこれ以上のロケーションはないだろうと思った。

「いい場所だろう。ここは人の手が入らないから自由にしていいよ」

 瑠美は母の骨箱をぎゅっと抱きしめて遠くを見た。


 冬樹が厳かに見守る中、遺骨を取り出し一握りずつ空に飛ばすように撒いた。
ちょうど風が吹き、小さな粉っぽい骨は風に舞った。

(お母さん、さよなら……)

 心から決別し瑠美は「ありがとうございました」と冬樹に礼をのべた。

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