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森の中

第1章 1 ハイキングコース

   公園の駐車場が見えてきて男が
「あのジムニーそう?」
   と、聞いてきた。

  「そうです。お手数掛けました」

   車が止まり瑠実は頭を下げて降りようとした。
 男が一言、「さよなら」 と言い、他に何か言いたげな素振りで瑠実の顔を見た。
  瑠実も「さよなら」と、言いながら、男の深い瞳の色に森の静けさとなぜだか郷愁の念を感じて切なくなった。


   降りてドアを閉めると男はすぐに発車し元来た道を帰って行った。見送りながら瑠実はしばらく立ち尽くしていた。

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