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金曜日のおじさま

第16章 dieciséis

中休みビアルネスは駅ビルに買い物に出かけた。

ドラックストアと輸入品ショップで消耗品を買い込む。

両手に荷物を下げて歩いていると背後から声をかけられた。

「どうも、荷物重そうだね」

振り返るといつだかのメモ男だった。

「あ、こんにちは」

ビアルネスはいつもの笑顔で答えた。

「荷物持ってあげるよ」

断るまもなく、手荷物を持ち去られる。

「そんな、自分で持てます」

イイって、と爽やかに微笑まれてビアルネスは何も出来なくなってしまった。

「中休み中なんでしょ、ちょっとお茶できる?」

メモ男はビアルネスの勤務状況をよく把握している。

「でも、戻らないと…おじs、オーナーが心配するかも」

「子供じゃないんだから、大丈夫でしょ」

荷物を人質に取られ、落ちついた老舗風のカフェに入っていった。
2階に上がっていく、2人以外に客はいなかった

奥まったコーナー席に座ると飲み物を注文してホッと息をついた。

「強引に誘っちゃってゴメン、こうでもしないと一生デート出来ないかなと思って」

「デートなんて…今日は普段着なんですね」

いつも店に来るときはスーツ姿だったので普段着だと若く見えた。

「今日は休みなんだ。そうそう、アドレス登録してくれた?」

「いいえ、無くしちゃって…」

飲み物が運ばれてきた。

「あ、そうなんだ…じゃあ、今ライン交換しようよ」

「え、でも…」

「ライン交換なんて大したことないよ。ダメ?」

メアド交換とどっちが良い?
という不自由な2択を迫られこれまた強引な流れでラインで繋がってしまった。

この日は色々聞かれて、自分のこともアピールしてきて時間が過ぎた。

アサクラ
/28歳
/出版関係
/独身
/テニス

「今日はありがとう。また、ご飯食べながらゆっくり話したいな」

強引だけど、わりと礼儀正しいアサクラ。
レストランの近くまで荷物も運んでくれた。

「荷物重かったでしょ、ごめんなさい。またお店に食べに来てね」

ビアルネスはペコリとお辞儀をしてレストランに戻っていった。

「やっぱり、可愛い子だなぁ」

◆ ◆
「ただいま」

「遅かったね?ティオさん心配してたよ」

店に戻るとキャスが仕込みをしながら話しかけてきた。

「うん、ちょっとお茶してたの。おじs…オーナーは?」

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