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Melty Life

第3章 春



「いたっ」

 突然、脛がずきりとした。今しがたの冗談に聞こえる要求を本気にしなかった知香を、痺れを切らせた一人が蹴りつけたのだ。

「早くしろよ、こっちは教室に咲穂を待たせてんの。あんたが何も出来ないのは知ってるから、面白く踊れば良いの」

「さっさとそこ行け、のろま」


 ありさの右隣にいるクラスメイトが指差したのは、校舎の真下の桜の木の前。


「侑目沢が底辺なのは知ってるし。下手で良いからさ。そうだ、素っ裸になればちょっとは見せ物になるんじゃない?」

「早く脱げよ!!」

「「脱ーげ!脱ーげ!」」

「や、ゃめ……」

「立てクズ!!」


 ありさが知香を前髪から掴み上げて、他のクラスメイトらが腕を捕らえた。


 罵声、雑言が知香を殴る。直接痛めつけられているわけでもないのに、脳天が鈍痛を訴える。


 知香に向けられる目には、いつでも憎しみや侮蔑がこもっていた。同世代の女子も男子も、それでますます苦手になる。男子が暴力を振るってくることはないが、例えばここが教室だったら、彼らは好奇の目を向けてきたろう。口先だけありさ達を咎めて、内心は非日常的なシーンを楽しむ。


 垢抜けないことは罪なのか。人との接し方が下手なのは、物を隠されたり、足を踏まれたり、持ち物を汚されたり、そんな罰を受けなければならないほど、悪いこと?

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