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女子寮の今年の下働き男子は

第1章 こそどろ騒動

「ここ…、かな?」
「ここ…だよ、きっと。だって、看板がかかってるから」
<私立天海学園中学校 女子寮>

寮の正門は、古めかしい江戸時代の武家屋敷のような屋形門だった。
その前にたたずむ、共に13歳でこの4月に中2になる女子、ふたり。
看板がかかっていると発言したのは、みゆき。
まだ不審げに首をかしげているのは、くみ。
みゆきとくみは、背丈は同じくらいでこの年代としては平均的な高さ。ただ二人の体型は、対照的だ。
みゆきはスリムでおなかがすべすべペチャンコなのに対し、くみはちょいぽちゃでおなかがポッコリ膨らんでいる。
服を着ていたらおなか周りなんかわからないだろうが、二人の二の腕と太ももを見ると、一目瞭然。みゆきは細い腕細い太ももなのに、くみはムッチリ腕ムッチリ太ももだった。

「なんだか、不安ー」
みゆきが、ため息をつく。
「わたし、親から離れて暮らすの初めて。どうなるんだろ?」
そんなみゆきの肩をポンポンと、くみが
「寮だし、集団生活だからそんなに心配じゃないと思うよ」
みゆきは悲観的なキャラだが、くみは楽観的なキャラだった。
「でも、寮には大人がいないんでしょ?当番制で自炊しなくちゃいけないし…」
みゆきの可愛らしい顔が、曇る。
「うん…、それについてはわたしも不安なんだよね…。わたしも、料理したことないし」
くみも、少し沈んだ表情になった。

マイクの音量がオンになったときにする、ゴソゴソという音が聞こえた。
「えー、みなさん、寮長です。今日は、このまま各自割り当てられた部屋に入り、支給される夕食を取り、沸かしてあるおふろに入って、そのまま就寝してください。寮生活の進め方その他は、明日説明します」
という年配の女子の声が、辺りにこだました。

「みゆき、とにかく入ろうよ」
「そうだね、くみ」
二人の13歳の女子たちは、屋形門をくぐり中に入った。

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