数珠つなぎ
第8章 僕らは認めない
カランカラン……
耳で喫茶店のドアが開いたことがわかる。
でもその音は、誰かが来店を告げるものではないんだろう。
潤が最後に立ち上がって、『ありがとうございました』と
挨拶していた気がする。
続く沈黙。
誰も……何も言わない。
変わらない景色。
誰とも……目線が合わない。
聞こえるのは店内に流れるジャズ。
たぶん入ってきた時流れていた曲と同じだと思う。
2周目に入ったのかな?
現実から逃げたくて、わかりもしないジャズに耳を傾ける。
「失礼します」
皆の顔が一斉に上がった。
テーブルの前に、マスターが立っていた。
「入れ直すね」
テーブルにあるグラスを回収していく。
「いえ、だいじ……」
「美味しくない飲み物は、飲んでほしくないからね」
智の言葉をマスターの優しい言葉が遮る。
みんなグラスには飲み残したカフェオレ。
氷が完全に溶け切って、上に水の層ができていた。
「少々……お待ちください」
そう言ってカウンターへと戻っていくと、すぐに新しいカフェオレを持ってきてくれた。
「どうぞ」
古いコースターを下げて、新しいコースターの上に新しいカフェオレが置かれていく。
「ごゆっくり」
マスターはまたカウンターの裏へと消えた。
みんな目の前に置かれたカフェオレを見つめる。
「飲もう。せっかく入れてもらったんだから……」
智の言葉で俺たちはカフェオレを飲んだ。
それはさっきよりも甘かった。
その甘さが空っぽになった身体に優しさとなって染み込んでいく。
「うっ…くっ、ううっ…」
カフェオレにポタポタと落ちる雫。
「雅紀……雅紀」
潤が優しく背中を上から下に撫でると、また雫が溢れだしていく。
俺たちが知っているあの『櫻井翔』は、もうどこにもいない。
警察に逮捕をされることもない。
そして俺たちに殺されることもない。
もう、何もされない。
もう、何も出来ない。
俺が……
俺たちが復讐してやりたかったヤツは、いったい誰だったんだ?
それは永遠にわからない。
そして名前も知らないアイツは、誰も捕まえる事の出来ない場所に逃げてしまった。
耳で喫茶店のドアが開いたことがわかる。
でもその音は、誰かが来店を告げるものではないんだろう。
潤が最後に立ち上がって、『ありがとうございました』と
挨拶していた気がする。
続く沈黙。
誰も……何も言わない。
変わらない景色。
誰とも……目線が合わない。
聞こえるのは店内に流れるジャズ。
たぶん入ってきた時流れていた曲と同じだと思う。
2周目に入ったのかな?
現実から逃げたくて、わかりもしないジャズに耳を傾ける。
「失礼します」
皆の顔が一斉に上がった。
テーブルの前に、マスターが立っていた。
「入れ直すね」
テーブルにあるグラスを回収していく。
「いえ、だいじ……」
「美味しくない飲み物は、飲んでほしくないからね」
智の言葉をマスターの優しい言葉が遮る。
みんなグラスには飲み残したカフェオレ。
氷が完全に溶け切って、上に水の層ができていた。
「少々……お待ちください」
そう言ってカウンターへと戻っていくと、すぐに新しいカフェオレを持ってきてくれた。
「どうぞ」
古いコースターを下げて、新しいコースターの上に新しいカフェオレが置かれていく。
「ごゆっくり」
マスターはまたカウンターの裏へと消えた。
みんな目の前に置かれたカフェオレを見つめる。
「飲もう。せっかく入れてもらったんだから……」
智の言葉で俺たちはカフェオレを飲んだ。
それはさっきよりも甘かった。
その甘さが空っぽになった身体に優しさとなって染み込んでいく。
「うっ…くっ、ううっ…」
カフェオレにポタポタと落ちる雫。
「雅紀……雅紀」
潤が優しく背中を上から下に撫でると、また雫が溢れだしていく。
俺たちが知っているあの『櫻井翔』は、もうどこにもいない。
警察に逮捕をされることもない。
そして俺たちに殺されることもない。
もう、何もされない。
もう、何も出来ない。
俺が……
俺たちが復讐してやりたかったヤツは、いったい誰だったんだ?
それは永遠にわからない。
そして名前も知らないアイツは、誰も捕まえる事の出来ない場所に逃げてしまった。