数珠つなぎ
第9章 俺たちは歩いていく
【潤side】
――数年後
店内に流れる心地のいいジャズ。
カランカラン……
「いらっしゃいませ」
俺はカウンターから常連のお客様を招き入れる。
「いつもの、お願い」
「はい、かしこまりました」
コーヒーミルを取り出して、部品を取り外していく。
中居さんは濃い目が好きだから……
挽き目調整ネジを時計回りに回した。
そして部品を元に戻すと蓋を開け、豆を入れた。
ガリガリガリ…
コーヒーの香ばしい匂いが漂う。
丁寧に……だけど素早く。
ハンドルを回しながら音の変化を聞きとり、最適な粗さへと挽いていく。
挽き具合を目でチェックするのが一番だが、その度にコーヒーの香りが飛んでしまう。
『それではいいコーヒーを提供できない』
マスターの言葉が思い出される。
今だってカウンターに座って読書してるけど、耳だけはこっちに傾けている。
目も悪くなって腰も曲がってるのに、耳だけは全く衰えない。
ガリガリガリ…
音がまた少し変わった。
これくらいでいいかな?
俺はハンドルを回している手を止めた。
「まぁまぁ……だな」
本に目線を落としたままポツリと呟いた。
及第点ってとこみたいだな……
「今日も見せてくれるか?」
中居さんが俺の前に座った。
「はい」
いつも中居さんはコーヒーが出来る様子を見る。
俺がここに立つようになってからずっと……
サイフォンを用意し、準備を整えるとコーヒーを抽出を始めた。
「すっかりコーヒーを入れる姿が板についたなぁ……」
「ありがとうこざいます」
その言葉が嬉しかった。
『ここはお前の居場所なんだ』って、言ってくれているような気がしたから……
「まだまだ半人前だよ」
またポツリとマスターが呟いた。
「この間、みんな立派になったって言ってたじゃないか」
「酔っぱらってて覚えてないよ」
酔っぱらっる時に言ったって事を知ってるって事は、覚えてるんじゃない?
「お待たせしました」
そんな矛盾を嬉しく思いながら中居さんの前にコーヒーを注いだコップを置いた。
――数年後
店内に流れる心地のいいジャズ。
カランカラン……
「いらっしゃいませ」
俺はカウンターから常連のお客様を招き入れる。
「いつもの、お願い」
「はい、かしこまりました」
コーヒーミルを取り出して、部品を取り外していく。
中居さんは濃い目が好きだから……
挽き目調整ネジを時計回りに回した。
そして部品を元に戻すと蓋を開け、豆を入れた。
ガリガリガリ…
コーヒーの香ばしい匂いが漂う。
丁寧に……だけど素早く。
ハンドルを回しながら音の変化を聞きとり、最適な粗さへと挽いていく。
挽き具合を目でチェックするのが一番だが、その度にコーヒーの香りが飛んでしまう。
『それではいいコーヒーを提供できない』
マスターの言葉が思い出される。
今だってカウンターに座って読書してるけど、耳だけはこっちに傾けている。
目も悪くなって腰も曲がってるのに、耳だけは全く衰えない。
ガリガリガリ…
音がまた少し変わった。
これくらいでいいかな?
俺はハンドルを回している手を止めた。
「まぁまぁ……だな」
本に目線を落としたままポツリと呟いた。
及第点ってとこみたいだな……
「今日も見せてくれるか?」
中居さんが俺の前に座った。
「はい」
いつも中居さんはコーヒーが出来る様子を見る。
俺がここに立つようになってからずっと……
サイフォンを用意し、準備を整えるとコーヒーを抽出を始めた。
「すっかりコーヒーを入れる姿が板についたなぁ……」
「ありがとうこざいます」
その言葉が嬉しかった。
『ここはお前の居場所なんだ』って、言ってくれているような気がしたから……
「まだまだ半人前だよ」
またポツリとマスターが呟いた。
「この間、みんな立派になったって言ってたじゃないか」
「酔っぱらってて覚えてないよ」
酔っぱらっる時に言ったって事を知ってるって事は、覚えてるんじゃない?
「お待たせしました」
そんな矛盾を嬉しく思いながら中居さんの前にコーヒーを注いだコップを置いた。