数珠つなぎ
第9章 俺たちは歩いていく
マスターはあの日、俺たちを救ってくれた。
アイツが死んでからの俺たちは抜け殻だった。
ただご飯を食べて、ただ眠って。
そしてぽっかり空いた穴を埋めるように、俺は雅紀を抱いて……抱かれた。
きっと智と和也も同じだったと思う。
ただ時間の流れるままに生きていた。
けど俺たちは毎日会っていた。
約束をしたわけでもなく、この喫茶店に通っていた。
ここは全ての終わりを告げられた場所。
でも何か会話するわけでもなく、だだカフェオレを注文して飲んでいた。
あの日と同じ、甘いカフェオレ。
そしていつも俺たちの手には封筒があった。
アイツが死んだ次の日、それぞれの家にそれは届いた。
その中にはそれぞれの名義の通帳とハンコ、そして『ごめんなさい、そしてさようなら』と書かれた手紙が入っていた。
通帳には1000万。
全てをビリビリに破いて捨ててやりたかった。
でも……出来なかった。
これは俺たちの前にアイツがいたという唯一の証。
でもその証が、そして手紙の謝罪の言葉が俺たちに変化をもたらすことはなかった。
あの日までは……
「いつまで、そうしてるんだい?」
いつも最低限しか話さないマスターがカウンターから俺たちに声をかける。
俺たちは何も答えない。
いや、答えられなかった。
俺たちは……どうしたらいいんだ?
「そろそろ前に進んでみたらどうだい?」
前に進むって……どこに?
「君たちはカフェオレが……好きかい?」
「「「「はい」」」」
俺たちは、はっきりと答えた。
変化のない毎日だったけど、この喫茶店に来ることだけは欠かさなかった。
甘くて……マスターの優しさが詰まったカフェオレが大好きだ。
「じゃあ、ここで働かないか?」
想像していなかった言葉に、俺たちは唖然とマスターを見つめていた。
「ここで君たちの時間は止まった。だからここから君たちの時間を進めなさい」
優しい目ではなく、力強い眼差しを俺たちに向けた。
俺たちはまた、マスターに甘えていいんですか?
心の中の問いかけに応えるように、今度はいつもの優しい笑顔を俺たちに向けた。
アイツが死んでからの俺たちは抜け殻だった。
ただご飯を食べて、ただ眠って。
そしてぽっかり空いた穴を埋めるように、俺は雅紀を抱いて……抱かれた。
きっと智と和也も同じだったと思う。
ただ時間の流れるままに生きていた。
けど俺たちは毎日会っていた。
約束をしたわけでもなく、この喫茶店に通っていた。
ここは全ての終わりを告げられた場所。
でも何か会話するわけでもなく、だだカフェオレを注文して飲んでいた。
あの日と同じ、甘いカフェオレ。
そしていつも俺たちの手には封筒があった。
アイツが死んだ次の日、それぞれの家にそれは届いた。
その中にはそれぞれの名義の通帳とハンコ、そして『ごめんなさい、そしてさようなら』と書かれた手紙が入っていた。
通帳には1000万。
全てをビリビリに破いて捨ててやりたかった。
でも……出来なかった。
これは俺たちの前にアイツがいたという唯一の証。
でもその証が、そして手紙の謝罪の言葉が俺たちに変化をもたらすことはなかった。
あの日までは……
「いつまで、そうしてるんだい?」
いつも最低限しか話さないマスターがカウンターから俺たちに声をかける。
俺たちは何も答えない。
いや、答えられなかった。
俺たちは……どうしたらいいんだ?
「そろそろ前に進んでみたらどうだい?」
前に進むって……どこに?
「君たちはカフェオレが……好きかい?」
「「「「はい」」」」
俺たちは、はっきりと答えた。
変化のない毎日だったけど、この喫茶店に来ることだけは欠かさなかった。
甘くて……マスターの優しさが詰まったカフェオレが大好きだ。
「じゃあ、ここで働かないか?」
想像していなかった言葉に、俺たちは唖然とマスターを見つめていた。
「ここで君たちの時間は止まった。だからここから君たちの時間を進めなさい」
優しい目ではなく、力強い眼差しを俺たちに向けた。
俺たちはまた、マスターに甘えていいんですか?
心の中の問いかけに応えるように、今度はいつもの優しい笑顔を俺たちに向けた。