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数珠つなぎ

第4章 あなたたちを助けたい

「ありがとうございます。もう、大丈夫ですから」

その言葉を聞いて、背中に回していた手を緩めた。

冷たかった二宮の身体はいつの間にか温かくなって、震えも少しだけ収まっていた。


「いきなり……ごめん」

俺の言葉に二宮は何回も首を横に振った。


「何て言っていいかわかりませんが……自分の感情を相葉さんが代わりに吐き出してくれたようで、嬉しかったです」

お礼なんて言われる筋合いはなのに、二宮の言葉で俺の心は救われた気がした。


だったら俺も……

ちゃんと二宮に伝えなきゃいけない。


「ひとつだけ、お願いがあるんだ」

二宮の肩をグッと掴むと、突然の事に瞳が揺れた。

「決して、希望を捨てないで。自分の事や智って人との事。今、そして未来を……」


潤が俺との未来を諦めなかったように……


「はい、絶対に諦めません」

迷うことなく真っ直ぐに俺を見つめる二宮の瞳と力強い言葉に、俺は何も言えないまま逃げるように部屋を出て行く。

「あのっ!どうして智の事を?」

「それは近いうちにわかるから」

「相葉さんは一体……」

「何だろうね……わかんないや」

ポツリと呟きながら部屋を後にした。




ピンポーン…


初めて聞いた獣の来店を告げる音。

モニターに映るのは二宮にとっての初仕事の上客。


俺は怒りを抑えるようにグッと拳を握りしめた。


「いらっしゃいませ……合言葉をお願いいたします」


『時は金なり』


「どうぞお入りください」

俺は施錠を解除するボタンを押し、獣を簡単に招き入れた。


VIPルームの鍵を持って獣を案内する。


「どうぞ……」

鍵を開けると二宮はベッドに座っていて、獣は嬉しそうにその姿を見つめながら部屋に入っていった


廊下に立つ俺の前でゆっくりと扉が閉まっていく。


その隙間、振り返って俺と目を合わせた二宮が微笑んだ。


パタン…


二宮の姿はもう見えない。



俺は正しい事をしているの?

やっぱり、間違っているの?


誰か……教えて?


二宮から発せられる喘ぎを背に、冷たい雫を頬に流しながら俺は受付へと戻った。

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