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数珠つなぎ

第4章 あなたたちを助けたい

「泣かないでください」

二宮の手が顔に伸びてきて、いつの間にか流れ落ちていた涙を拭ってくれた。

「ここじゃマズいから、とにかく部屋に行きましょう」

胸倉を掴んでいた俺の手を取ると、そのまま引っ張って歩いてくれた。

「鍵、くれますか?」

あの部屋の前まで来ると、俺に手を差し出した。


嫌だ。

絶対に渡したくない。


ポケットに手を入れ、グッと鍵を握りしめた。

するとそのポケットに二宮の手がスッと入ってきて俺の手を包む。


握りしめた俺の手を優しいく包む二宮の掌。

「鍵……渡して下さい」


真っ直ぐ迷いなく俺を見つめる二宮の瞳に、ここに来た覚悟を感じずにはいられなかった。


俺は鍵を握りしめていた手の力を弱めた。


「ありがとう」

優しく……そして儚い笑顔を見せると、俺の手から離れた鍵をポケットから取り出して、自分の初仕事の部屋を開ける。

「まだ、時間あるから入って下さい。って、俺の部屋じゃないんですけどね」

二宮の言葉に甘え、続いて部屋に入った。



真ん中にある大きなベッド。



ここで潤も、誰かに初めて抱かれた。



そのベッドに二宮が腰を下ろした。


もうすぐ二宮もここで……


そう思ったら勝手に身体が動いた。

二宮の腕を掴んで立ち上がらせるとそのままギュッと抱きしめた。

「あ…相葉さん?」

「……少しだけこのまま」


あの日ここで1人、潤はどう過ごしていたの?

今の二宮みたいの誰にも気づかれないまま、不安や恐怖に震えていたの?


こんな事、俺がしたってなにも意味がない。

きっと今、抱きしめて欲しいのは俺じゃなく智って人のはず。

わかっているけど、抱きしめる腕に力を込めた。



智って人の代わりに……なんてただの綺麗事。



あの日、潤に出来なかったことを二宮にすることで、少しでも自分の罪を軽くしたいだけ。


最低な俺だけど、抱き締めることだけは絶対に止めない。


どんな邪な理由だとしても、二宮のこの震えが少しでも収まるなら……

そう思う気持ちだけは、絶対に嘘じゃない。


冷たい二宮の身体を温める。

それだけが今、俺が二宮に出来る唯一のことだから……

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