テキストサイズ

ヌードモデルは揺れる

第1章 裸にはされません

私は自然体で立ち、ポーズの詳しい指示を待った。

ところが、たっぷり一分も待たされてから、「やっぱりヌードから始めよう」と、和田さんは言った。


珍しいことではない。

コスチューム(着衣)画でも、仕上げの段階までモデルは裸体ということは多い。

正確に描くためには裸で観察するのが一番なのだから。

ヌード要請は想定内だったから、下着は用いてなかった。

頭から抜くというだけで、いつものガウンを落とすのと何ら変わりはない。
その場でさらりと全裸になった。

手は自然に垂らして、重心は右、顎を引いて視線はやや上。

すらすらと指示が出て、言われた通りにする。

ポーズが決まると、木炭がキャンバス上を動き出した。

──やがて、ふと疑問がわいた。

いくらなんでも、これくらいのポーズでヌードにする必然性があるのか、と。

わかりにくい位置関係の手足はない。力の入っている筋肉もない。

それどころか、服に押し付けられた乳房が完成作品となるので、今の胸を描写する意味は薄い。(さらに私はBカップだし)

ちょっとは自信のあるお尻も圏外だ。

──ヌードモデルだから、裸を見ないともったいないと思ってませんか?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ