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「おーい！ おーい！」

　男の声がすぐそばまで聞こえた。
　しかしどこを見ても男の姿は見当たらない。

(幻聴？ ううん、だってこんなにハッキリと──)

「！！」

　瞬間、背中に悪寒が走った。
　一瞬で身体は凍り、全く身動きができなくなった。

「い……いやっ……」

　気づけば、ウネウネとした黒い触手が身体を這ってきていた。そして身体がズブズブとソレに飲み込まれそうになっていた。

(……ああ、私……また死ぬんだ……)

　そう諦めかけた時、

「しっかりしろ！」

　別の男の声が聞こえたかと思うと、左腕を強く引っ張られた。

「きゃあっ！」
「…大丈夫か？」

　ヒカルは恐る恐る顔を上げると、まっすぐ自分を見つめてくる青い瞳と目が合った。自分を助けてくれた男は、端正な顔立ちをした銀髪の青年だった。

「おーい……おぉぉぉぉい！」

　ハッとして後ろを振り返ると、ヒカルを飲み込もうとした黒い影がウネウネとこっちに近づこうとしていた。獲物を取られたせいか、怒っているように見える。

「逃げるぞ！」

　銀髪の青年がヒカルの手をしっかりと握る。
　壁づたいに歩くと、さっき見つけた洞窟があった。その入り口にはまた別の男が松明を持ってこっちに向かって手を振っていた。