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「おう、ただいま。レイナ」

　バットは微笑むと、レイナと呼ばれた女性の頭に手を置いた。
　しかしレイナの目はクロードを追っている。

「ねぇクロード……カルビは？」
「カルビはシャドーに食われて死んだ」
「そんなっ……」

　レイナは言葉を失った。

「ホルモンだけじゃなく、カルビまで食べられるなんてっ……」

　それを聞いてヒカルは複雑な気持ちになった。

「こんなに人が食べられてるのに、それでもザッハ伯爵はあの城に住むの？ 調査なら自分たちでやればいいじゃない！ どうして町のみんながっ……」

　レイナは早口に捲し立てたあと、ヒカルの存在に気づいた。

「あら……あなたは？」

　レイナはヒカルの姿を上から下まで眺める。

「その上着……クロードの……」
「俺が貸したんだ」

　ヒカルが答えるより先にクロードが口を開く。

「……そう」
「レイナ、ヒカルを一晩泊めてやってくれないか？」
「えっ」

　クロードの言葉にレイナとヒカルは同時に驚く。
　まさか事情を知らない女性の家に泊めさせてもらうとは思わなかったから、ヒカルは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「ヒカルはちょっとワケありみたいなんだ。俺たちの家に泊めさせるわけにもいかないし、な？」

　バットにまで頼まれて、レイナは渋々承諾した。

「二人からの頼みなら仕方ないわね。その代わり今度ご飯おごりなさいよ？」
「喜んで」

　バットが即答する。

「クロードもよ？」
「……わかったよ」

　レイナの機嫌は直ったようだ。