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ぼっち─選択はあなたに─

第26章 黒い犬【選択8】

 レイナの宿屋に戻ると、賑やかな声が聞こえてきた。

「ヒカル、おかえりなさいっ!」

 出迎えてくれたのはレイナだが、奥のテーブルにはバトルトーナメントのメンバーのレシピェールやメキユ、アバレセーラーやミトナツコが集まっていた。

「やっだ、もぅ! ナツミったらあ~!」

 先に帰宅していたナツミは、すでにみんなの輪の中に溶け込んでいる。

「修道院のお手伝いはどうだった?」
「うん、なんとか出来たよ。明日もお手伝いしにいくつもり」
「そうなのね! 良かったわ」
「あの、これ……少ないけど」

 ヒカルはおずおずとお金を差し出した。

「ありがとう、気持ちだけ頂くわ」
「え?」
「だってこれはヒカルが初めて頑張って稼いだお金だもの、ヒカルが使って。それで余裕ができたら、少しずつお願いできる?」
「レイナ……」
「ふふっ、今日はヒカルとナツミのために、みんなで料理を作ったの! 私も料理教室で教えてもらって、スープ以外のものが作れるようになったのよっ」

 レイナは腰に手を当てて、得意気な顔をする。

「すごいね、レイナ」
「すぐ用意するから待ってて」
「うん、部屋で待ってるね」

 ヒカルはチラッとナツミたちの方を見ると、静かに階段を上がっていった。

「ふう……」

 思わず避けてしまったけど、一言くらい声を掛ければ良かっただろうか。


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