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ぼっち─選択はあなたに─

第27章 西の森【選択9】

 西の森に近づくと、小さな池のそばに小屋があるのが見えた。
 ヤクモはそこに降り立つ。

「中を見てきます」

 ヤクモは完全な人間の姿に戻ると、小屋の中をくまなく調べた。

「誰もいませんね」
「……」
「とりあえずここで休ませてもらいましょう」

 ヤクモはそう言うが、ヒカルは立ち止まったままだった。

「ヒカル様──私が怖いですか?」

 ヤクモの問いに、ヒカルは首を横に振る。

「人間の方が、怖いっ……」

 突然自分に向けられた怒りのこもった瞳が、脳裏から離れなかった。

「とりあえず休みましょう」

 ヤクモはヒカルの背中にそっと触れると、小屋の中に入った。
 小屋の中には机や椅子や暖炉などがあり、斧などの道具が置いてあった。しかしよく見るとクモの巣がかかっている。ヤクモは使えそうな薪を暖炉に入れると火をつけた。

 パチパチと火の粉の音を聞いているうちに、ヒカルは落ちつきを取り戻す。

「……二回も助けてくれて、ありがとうございました」

 修道院で黒い犬に襲われそうになった時、助けてくれたカラスはヤクモだった。

「殿下に代わって、あなたをお守りすると約束しましたからね」

 襲われそうになったのはアクアだが、それでも助けてくれたヤクモにヒカルは感謝した。



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