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放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)

第8章 放課後の教室で

耳からイヤホンを垂らして、下駄箱に寄りかかっている人と、自然と目が合った。


「あ」

「おはよう! 色葉チャン、それとミナちゃんとサラちゃん」


……青井先輩だ。


「きゃー! ミナたちの名前まで覚えてくれたんですかぁ?」


「うん。俺可愛い子はすぐ覚えちゃう」


冗談交じりに笑う先輩の腕をミナは叩いて「もう!」というんだから、すごいコミュ力。


「でも先輩は色葉狙ってますよね?」


サラがまるで確認するかのような口ぶりで言うと、先輩は言い淀むことなく返した。


「そうかもねー?」


ちらりと横目があたしのほうを見て、笑みを作る。


先輩との距離感になじめなくて、なんとなく目をそらした。



「てかぁー聞いてください先輩! 色葉ってば胸がFカップ」「だっ、だめ!! ミナ!」



とんでもないことを口走ったミナの口を両手で抑え込む。



あたしの頬はもう真っ赤になって焦っているのに、先輩はきょとんとしてから、頬を緩めた。



「なにも聞こえてない。大丈夫だよ、色葉ちゃん」


そんなわかりやすい嘘……。
……最悪。



男の人に胸のサイズを知られるなんて、あり得ない……。


あたしの腕の中でじたばた暴れるミナ、ありえない……。



でも力をゆるめてミナを解放すると、


「ごめんっ。でもミナなりの恋の応援! いいおっぱいは男を釣れる!」



なんて意味の分からないことを耳打ちされて、ため息がでちゃう。


落胆のあたしに、真逆の心境にでもいそうな声で先輩が言った。



「色葉ちゃん、今日の放課後ってあいてる? お兄ちゃんが許さないかな?」


お兄ちゃん?


首を傾げそうになって思い出した。


澄くんは双子の兄なんだっけ。


吹き出しそうになったけど、堪えて答える。


「すみません。今日は補習があるので」


「そっかぁー。じゃあまた誘うね」



そう言ってまたあっさりと離れて行った。


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