テキストサイズ

❇️片暉の残照❇️

第9章 城下町と嫉妬の炎


「――――テイス様…どうされましたか?」


慌てて所長室を出た私を追いかけるニコルとキロが心配そうに顔を覗く。


「だ、大丈夫――――!王族の方と…話なんて!き、緊張したから!!」


もちろん、緊張したのは嘘ではない!


あの、銀髪の男性に下着姿をバッチリ見られていた事も赤面ものたが…


成祝の日に出会った、ジルベルト様のご子息だと思うと…なんだか怖くてたまらない…。


「そうですよね…あの――――ジルベルト様のご子息ですから」


ニコルも成祝の日のジルベルト様とのやり取りを見ていた1人として…、私の言葉に納得してくれたのか、深いため息をついた。



「さて、気を取り直して――――ザジのところで寒さに強い薬草を見せてもらいましょ?」


「はい」


“怖い――――”と、怯えていても仕方がない!そう考えた私は気合いを入れ直しノートを手にザジのいる研究室へ向かった。



「ザジ――――!冬の薬草見せて!」


「テイス様――――♪」
「やぁ、テイス様」
「元気でしたか?テイス様」


ザジのいる研究室に入ると、見慣れた顔ぶれの三人が迎えてくれた!



「あの時の!フライさん!ココアさん!コーンさん!お元気でしたか!?あの時はご迷惑をかけました!」



駆け寄ると、植物園で植物の植え替えを一緒に行った三人に挨拶をする!


「テイス様が公爵家様だと知らずに――――ご無礼をお許しください…しかも――――あのな仕打ち…まで」


フライさんが、怯えたように謝るが…私は「大丈夫です!うまく誤魔化せました!」と、ウィンクすると三人はホッとした様子だった。


「リンデル所長には事情や状態を話しましたが――――…お嬢様が内緒にしたい意向だと手紙で読みましたから…」


「ありがとうございます!面倒な事になりそうでしたし…これでいいと思っています!」


赤毛の彼女との間に何があったのか…は、その時その場にいたこの三人とリンデル所長だけが知る事となるが――――…みんなに心配かけたくないし…。


ドレスを汚したのは事実だし――――…顔にも傷が残らなかったし、問題ないだろう!









ストーリーメニュー

TOPTOPへ