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ダブル不倫 〜騙し、騙され

第3章 3

 気がつけば五〇〇ミリの缶ビールが空いていた。畠山も同じだった。
 
 優子は全てを打ち明けた。修一の浮気のこと。キスマークをつけて帰ったこともあること。
 
 いつの間にか溢れた涙が頬を滑っていた。
 
「ご……ごめんなさい、私ばかり……話してた……」
 
「あの、…………」と、畠山が言ったあと、彼の顔が近づいた。
 
「あ……」冷たい唇が涙が滑る優子の頬に触れた。子宮がキュンと鳴いた。畠山の唇はすぐに離れた。
 
「ああ、僕、ぼく……つい……ああ、ごめんなさい、ごめんなさい」
 
 息苦しいくらいに、優子の心臓が強く打っていた。身体が震えていた。
 
 小さなグラスの奥の畠山の目を見た。色素の薄い彼の瞳の中に優子が映っている。彼の顔を引き寄せた。冷たい唇に優子の唇を重ねる。舌先で、彼の舌を探った。彼の舌先が優子の舌に絡みつく。泡立つ唾液を交換し合う。
 
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「畠山さん、また会っていただけませんか。今度は……」
 
「はい、ぜひ……」
 
 畠山が玄関を開けた。
 
「ちょっと……」
 
 畠山の首すじに唇を寄せた。
 
 ちゅぱっ……。
 
「うっ……」
 
 畠山の声が歪んだ。彼の首筋に赤紫色の小さな花びらがある。
 
「ありがとう……」
 
 と言いながら、優子は畠山の首すじについた〈桜の花びら〉を指先で撫でた。
 


 優子の心は弾んでいた。無意識の間に笑みが溢れる。こんなにワクワクドキドキする気持ちになるのは結婚以来なかったような気がした。指先で唇を触った。
 
 ベッドで眠る夫の顔を見た。その顔はいつに無くスヤスヤと眠っているように見えた。
 
 ――ベェーだ。
 
 バスルー厶に入った。
 
 畠山のことを考えていた。彼の瞳に映った自分の顔。重なる冷たい唇。トロトロと交換する泡立つ唾液。彼の首筋につけた〈桜の花びら〉。どれも優子にとって新鮮だった。
 
 薄い水色のショーツのクロッチには幾重にもついた輪染みの跡があった。
 
 ただ、今は熱を帯びた身体を冷ましたかった。優子は身体を清めるように冷水の飛沫を頭から被った。
 
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