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ダブル不倫 〜騙し、騙され

第3章 3

 凛華が帰宅してから、夕飯の支度が始まる。その日はカレーライスだった。凛華も料理を手伝った。
 
「ママ、風邪よくなった?」
 
 凛華の小さな手のひらが優子の額に触れる。
 
「うん、ママは凛華のお陰で治ったわ。ありがとう」と優子が言ったあと「凛華、人参、洗って……」と優子は人参を数本、凛華に渡した。
 
「うん、洗って、人参の皮を向けばいいのね?」
 
 凛華は人参を洗ってから、ピーラーで丁寧にその皮を削ぎ始めた。
 
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「凛華、お隣りの畠山のお兄ちゃんも呼んで来ようか?」
 
 優子は出来上がったカレーを少し小皿に取り、味見をしながら凛華に言った。
 
「じゃあ、私、呼んでくるねっ……」
 
 :
 :
 
「ごちそう様でした」

 畠山は手を合わせたあと、「ああ、美味しかったlと白い歯を見せ、喉を鳴らして水を飲み干した。
 
「お兄ちゃん、カレー……凜華も手伝ったのよ。ね、ママ?」
 
 ダイニングテーブルのカレーライスと野菜サラダは、綺麗になくなっていた。
 
「畠山さん、毎日、きちんと食べてる? バランスも考えて食べなきゃダメよ」
 
 ピンポン……。インターホンの呼び出し音が鳴った。
 
「パパだ!」
 
 凜華が玄関に駆けて行った。すぐに、凜華は修一と手をつないでダイニングに入る。
 
「凛華、そろそろ寝ましょうね」と優子が言ったあと、「あなた、お隣りの畠山さんと、一緒にご飯を……」
 
「うん、ああ、家内と娘がお世話になっています。また、一杯……」と修一が缶ビールのプルトップを引く仕草をしたあと、「今日は少し疲れてるので、風呂に入ってから寝るよ」と言って部屋を出た。
 
 ――今日も……。
 
「ふう……」
 
 優子が小さなため息をついた。
 
「畠山さん、お時間あります? もし、よろしかったら一杯お付き合いしていただけません?」
 
 優子は冷蔵庫から缶ビールを二本取り出した。

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