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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第9章 勝重からのプレゼント

二郎は言う。

「簡単に言えば、ご相談なんですよ。それを聞いてもらいたいなと思いまして」

「相談て、偏差値の低い私立高を卒業して、転がるように工場入って出世もせず結婚もしてない、だらしない独り身の貧乏男に、なにを聞く?」

「いや、あの……」

二郎の心の奥に、ひとつまみの不安が撒かれた。

良夫は、トーストを手に取る。

「で、格闘家であるあんたが、その携帯の記事を見て、僕になんの相談があるの? 初対面でしょ」

「いや、二度目です」

「え?」

良夫の口が止まる。

二郎は、腰にあるウェストバッグから、黒い狐のお面を出した。

「見覚えないですか?」

「……ないなぁ」

「そりゃあ良かった……いや、良かったじやないです。あれ、このお面ですよ」

良夫につられてノリツッコミをした自分に驚きつつ、狐のお面を示して自分をアピールする。

「いや、そのお面をあんたがつけてたとしてやな、いつ出会いました? それに、記事の写真は僕もお面をつけてますやん。なぜ今日会って、僕がそのお面の主だとわかるんよ? なんか、腑に落ちんことばかりやから、すっと受け入れにくいんやわ」

「あの掃除のロボットといた時、素顔見ましたよ」

「そいつは失礼いたしました」

素直に頭を下げると、良夫は、数日前の清掃ロボットクリーーーンとのやり取りを思い出していた。

記憶のフィルターが少しずつ、鮮明になってくる。

「あぁっ! あのロボットぶん投げた人だ!」

思い出した。

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