テキストサイズ

お面ウォーカー(大人ノベル版)

第7章 記者

「あぁ、マイクロチップを入れてるんやね。そういや、勝重もやってたな」

「意外と便利ですよ。さて、ちょっと取材させて下さいよ、田中良夫さん」

「えっ? なんで名前を知ってるん?」

良夫は、缶コーヒーを口につけるが、まだプルタブを開けてなかった。

夕子は、湯気のたつコーヒーを口に含み、喉に流しこむと、白く温かい息を吐いた。

「最初に気になったのは、ひと月近く前の夕方、麻薬の売買をやっている男を尾行していた時、男に尾行しているのが見つかって、田中さんが住んでいるアパートの裏の駐車場で、ナイフを突き付けられて脅されてたことあったんです」

「危ないことしてるなぁ……」と良夫もコーヒーを飲む。

夕子は、話を続ける。

「その時に上から、早くそこから出て行け、こらぁって声がして、なにか塊が落ちてきたんです。そしたら男が体をくねらせて、ナイフを落として逃げていったんですよ。上を見たら、窓からあのお面が見えました(第4章逃げられねぇ)あれ、田中さんでしょ。助けてくれたんですよね」

いつの話か、良夫にはまったくわからなかった。

「うん、まあ、そうですわ。顔を見られたら逆恨みされる恐れあるからね。だから、あのお面を……はい」

適当に答えてはみたが、それが正解なのかどうか、話が見えない。

夕子は、部屋の位置を確認し、助けていただいたことのお礼を言おうと部屋の前まで行ってはみたが、良夫がどういう人物なのかがわからず、躊躇いが出てしまったため、表札の名前だけを見て、帰ったという。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ