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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第7章 記者

その話を聞いて、良夫は呆れる。

「助けてもらったとか言ってもさぁ、よく、知らない男の部屋の前まで行ったよね。それも部屋の位置を調べてったんだろ? 普通に聞いたら引くよ」

「それだけ怖かったんですよ。本当に心から、助かりましたありがとうって言いたくて……でも、さすがに部屋の前まで行ったら、躊躇しました」と夕子は、苦笑いを見せる。

良夫は、「あの時、空気入れ替えようと、窓開けたら、下に厳つい男がいてあんたに攻め寄ってたから、つい、助けようと思ってよ」と記憶の隅にも残っていないことを、あったことのように話す。

夕子はその時のことを、鮮明に覚えていた。

「でも、私が見た時お面姿で、スパイダーマンのように逆さまになってましたね。あれは狙ってたんですか?」

「逆さま?」

記憶が甦った。あの時、お面が上下逆についたのだ。

「ああああぁぁ……あれは、トレーーーニングだよ。トレーニング」

「トレーニング?」

「あぁ、僕も生身の人間だからね、なにか危険なことがあったら、それなりに……」

良夫は内心、俺はなにを言ってるんだと自問自答を二回した。

夕子は、さらに良夫の懐に入り込んでくる。

「ここが職場なんですね、普段は、お仕事されてるってことなんてすね」

「当たり前やろ。働かなきゃ食ってけねえがな。あんた、仕事は?」

「私はフリーターみたいなものですが、地域スクープを見付けて、すぐに記事をサイトに載せれば報酬が貰えます」

「いくら貰えんの?」

「編集者の感覚で値段が変わります。安いのは五百円、高いのは万にもなります」

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