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不埒に淫らで背徳な恋

第5章 【贖罪することが救いなのでしょうか?】





「これじゃ、稜士が可哀相だわ……もし、その気になったなら必ず連絡ちょうだい」




もうその話はしないって言ったじゃん。
可哀相って何?
何も言わずにただただ頭を下げた。
プイッと去って行く背中を見えなくなるまで見送ってやった。




会社に戻ると何だか皆の目がやたら優しい。
きっと出て来てからの一部始終見てたんだろうね。




え、何?
チーフも姑関係苦労してんだなって?
大丈夫、もう決着ついたから。
さぁ、仕事するよ!
言っとくけど空回りの元気じゃないからね?
仕事してた方がリズム戻ってくるし本来の自分になれるの。
仕事してる自分が一番好きだし。




「チーフ、今から打ち合わせいいですか?」と田中くんからのお誘い。
二つ返事でソファー席へ移動する。




しどろもどろな説明から入る一生懸命な田中くんを見ながら、つい昼間の出来事が頭を過ぎる。
何度か名前を呼ばれてハッとした。




「えっと、ごめん…何だっけ?」




「やっぱり…明日にしましょうか?」




泣きそうになりながら遠慮させてしまったことに深く反省した。
隣に移動して距離を詰める。




「ごめん、ごめん!話続けて?」




パッと嬉しそうに頷く田中くんに少なからず癒やされてる。
テンパるとミスしがちな彼だけど独特な感性を持っているからデザインさせると結構ヒットしたりする。




「凄いじゃん、めっちゃ良いと思う」




誰かさんと同じで褒めると伸びるタイプなのよね。




「やった!久しぶりにチーフに褒められた!」




「そうだっけ?」




「はい!あ、今日は机の上もちゃんと整理出来てます!」




そんなことを得意げに言う姿が微笑ましい。
仕方ない、もう少し褒めてやるか。
前髪に触れて撫でてあげる。
良い子、良い子しながら笑うと俯いてそそくさと「続きやりますね」とデスクに戻って行った。




コーヒーでも飲もうといれていたら今度は背後に佐野くん。
来たの気付いてたから「飲む?」と聞く。
ボソッと「俺にも良い子良い子してくださいよ」とからかってくる。




コーヒーを手渡したら立ったまま隣に並んで。








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