不埒に淫らで背徳な恋
第5章 【贖罪することが救いなのでしょうか?】
「佐野くん、明後日の夜…空いてる?」
「えっ!?」
ん?どうした?
今は会社で、しかも堂々と皆の前でお誘いしてるから動揺してるの?
確かにかなり注目されてるね。
皆の手、止まってるし。
スケジュール表を確認しながら声かけたんだけど。
部長も居る全体会議の終盤で私が放った言葉にそこまで固まるか!?
むしろ皆の前で言わなければならない。
「えっと、実は以前から進めていたホワイトデザインの小山社長と最終打ち合わせを兼ねて食事に誘われているんですけど……さすがに二人きりというわけにはいかないので。3回お断りしている手前ちょっと今回だけ…ということで」
「俺が行こうか?」と部長が名乗り出てくれたが。
「ここはベテランより新人の方が良いかと」
「それもそうだな、研修も兼ねてと言った方が連れて行きやすい」
「え、僕じゃダメですか?ホワイトデザインの商品興味あります」と田中くんまで名乗り出る始末。
いや、有り難いけどね。
「でも田中くんスケジュール的に無理でしょ?もうすぐ○○企画さんとのコラボ立ち上げで余裕ないと思うんだけど」
「うっ…!そうでした」
「また今度お願いするね?」
「はい……」
「佐野くんはどう?いけそう?」
「バッチリです」
「じゃあ同行お願いします」
話は済んでミーティング終わろうとしたのに皆が寄ってたかって小山社長の思惑なんかを予想しだしたりする。
わかってる……口説きにきてることくらい。
私もそこまで鈍くないわよ。
だからこそ男が必要なの。
常にポーカーフェイスで居てくれる新人さんがね。
「畠中チーフ、1番に○○コーポレーションの新田さんからお電話です」
「ありがとう」
お陰様で仕事は適度に忙しい。
気が紛れて助かる。
追われてるくらいが丁度良い。
あの日、稜ちゃんから謝ってきた。
お義母さんから聞いたんだと思う。
また私の顔色をうかがう日々だね。
もう駅での待ち伏せもしないでと言った。