不埒に淫らで背徳な恋
第5章 【贖罪することが救いなのでしょうか?】
ニコニコしながら見ていたら二人ともと目が合って。
「何か良いですね、この関係」と笑った。
一枚上手だった佐野くんにやられた様子。
最終打ち合わせも無事終了した。
コース料理を嗜んでいる終盤で小山社長の携帯が鳴り仕事の急用で呼び出されたらしい。
「ここのデザート最高だから最後まで食べてって」と会社に戻って行った。
どれも最高の味ですよ、これ。
ホテルの最上階でのディナーコース。
小山社長クラスだとそうなるだろうと読んで接待用のワンピースにして正解だった。
佐野くんもいつもよりシックにスーツでキメている。
小山社長が去った後、胸を撫で下ろしていた。
「緊張したぁ〜」
「あれで?でも本当にありがとう、助かった」
「いえ、気に入られるのに必死なだけでした…いっぱいいっぱいですよ、僕」
急にクシャッといつもの笑顔見せるから不意打ち過ぎて一瞬で持っていかれる。
美味しいデザートも平らげて帰りのエレベーター。
運良く二人きりになっちゃって……
「今日の服も髪も……反則です」
「え…?」
隣に立つ佐野くんに顔を上げたらもうキスされていた。
壁側に押し倒すほどの深いキス。
「ダメ……人に見られたら」
「今は二人きりです」
何度も吸い寄せられる唇。
お願いだから誰も乗って来ないで…と願った。
いつ扉が開くかわかんないドキドキ感といつもより甘いキスに酔いしれている。
10秒だけ…と言われそうで私から唇を離した。
「今日は帰る」
突き放してごめんね?
本当はすぐにでもひとつになりたい。
でもこんな状態でいつ稜ちゃんが出てくるかわかんないから安易にキミを求められない。
上手く説明出来ないけどもう少し我慢して…?
可愛くおねだりする瞳で見ないで。
一番弱いとこにつけ込んでくる。
エレベーターが到着して寂しそう。
歩きながら正直に打ち明けた。
「旦那がうろついてるかも知れない……だからごめん」
「気付かれたんですか?」
「それはないと思うけど……念の為ね」
「わかりました」
「じゃ、私こっちだから」
「え、そっちですか?」
「実家から出社してるの」