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不埒に淫らで背徳な恋

第6章 【守るべきものがある人生は幸福ですか?】





キミは真っすぐだから行きたくないとか待ってて欲しいとか言うでしょ?
私がチラつくことで手に入れれるモノまで手放して欲しくない。
向こうに行くなら本気で本腰入れて挑んで来て欲しい。




英語が出来るから海外出張だって行けるだろうし、佐野くんなら海外展開だって夢じゃないかも。
そうなった時に私は間違いなく足を引っ張る存在になるだろうから。
先に身を引く私を許してね。




今は許せなくてもいつか忘れてシコリなんてなくなる。




だけど、こんなに泣いてたら元も子もない。
耐えるの……ちゃんと耐えてよ、私。
止まらない涙を拭いながら最後の顔を思い浮かべていた。




抱き締めたいのを必死に我慢したの。
触れてしまえば諸とも崩れるから。
酷い言葉を並べて愛が冷めたらいいと願いながら心に鍵をかけた。
こんな終わらせ方でごめん。




ごめんね………大好きだけど。




その手を離してごめんなさい。









辞令を受けたと部長づてに聞いたのは辞令当日の朝だった。
引き継ぎは勿論私だし気まずさはMAXだけどこれさえ乗り越えたらいつもの日常に戻る。




元々私が受け持っていたエリアだしスムーズに引き継ぎ出来てる。
仕事以外で話すこともない。
驚くほどに…お互い自然に振る舞えていることが少し寂しかったりもするが、そこでぐらつきそうになるのが私の悪いところだ。




もう心の整理が出来たのだろうか。
重なる視線が何も感じなくなっている。
そう、それでいいの。
車の中の沈黙もどうってことない。
ただ過ぎゆく時間に身を任せている感じ。





慌ただしい引き継ぎを経て、とうとう送別会の夜。




「佐野っちならどこ行ってもバリバリこなしちゃうんだろうね〜」




「いや、そんなことないです……皆さんのお陰です。本社に行っても僕のこと忘れないでくださいね?」




「うぅ〜!佐野っち〜!唯一の男子だったのに〜!」




また酔っ払い田中くんが号泣しちゃってる。
お手洗いから戻り、部長の隣に行こうとしたらその田中くんに無理やり座らされてしまった。








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