テキストサイズ

不埒に淫らで背徳な恋

第6章 【守るべきものがある人生は幸福ですか?】





ゲッ…!田中くんの前は佐野くんだ。
会話…しなくちゃならなくなる。
変な態度取っちゃったら逆に怪しまれたりするから避けてたのに、バカ〜!




「チーフはこっちです、僕の隣…!」




「た、田中くん酔ってるでしょ?また謝罪の電話してくるつもり?」




「違います、僕はチーフと飲みたい!佐野っちと3人で語り合いましょうよ」




ひぇ〜!お願いだからやめて。
おかわりの飲み物が来て再び乾杯することに。




「お疲れ様、来週から身体に気をつけて頑張ってね」




笑顔で言えたと思う。
それに負けないくらいのクシャッとした笑顔が返ってきた。




「はい、畠中チーフの元で少しの間でしたけどご指導頂きありがとうございました。頑張ってチーフ追い越すんで覚悟しててくださいね?」




グラスを交わして3人で飲み始める。
30分も経たないうちに田中くんはコクリコクリ…と寝始めてしまった。
弱いくせに周りを和ませようと必死になるんだから。
気持ち良さそうだし少し寝かせることにした。




その後部長と何人か加わって楽しいひと時を過ごす。
お酒も程よく回って最後は笑い合えていた私たち。




「本当に皆さん、ありがとうございました!僕、本社で頑張って来ます!」




「よし、出世して帰って来い!」




「はい…!!」




皆をタクシーで帰らせた後。
なるべく明るい声で元気良く。




「じゃあ、私こっちだから。気をつけてね、お疲れ様」




涙を堪えて精一杯笑顔を見せて背を向けたのに。
いとも簡単に腕を掴み止められる。
どうしたの?ってアイコンタクト。
わかってるでしょ?
ここで自然にサヨナラするんだよ…?




どうして強く抱き締めるのよ。
誰も見てないことないんだよ…?
軽く突き飛ばした。
怒ってるフリも疲れるの。




「何してるの?迷惑だからやめて」




「最後だから…!僕の我儘聞いてもらっていいですか?」




「えっ……!?」




ニッコリ笑い強引に連れて来られた場所。
ていうか今日、ヒールなんだけど?




「最後に此処来たかったんです」








ストーリーメニュー

TOPTOPへ