不埒に淫らで背徳な恋
第1章 【心の歪み、気付いてる?】
「何かスポーツやってたの?」
「向こうでも剣道を」
「へぇ……」
面の中で滴り落ちる汗、
力強く踏み込む足、
竹刀で華麗に攻め立てる腕。
この体格だと凄く似合ってたんだろうな……道着。
「触らないんですか?」
「えっ!?」
腕を差し出したままこっちを見ている佐野くんにハッと我に返る。
「もう……結構です」
剣道って聞いただけでリアルに妄想してしまっていたなんて口が避けても言えない。
少しずつフェイドアウトしようとしたらまた目が合っちゃった。
「また触ってもらえるよう鍛えておきます」
「えっ!?も、もう触らない!触らないから」
言動が予想外過ぎてプチパニック。
こっちがアタフタしてるのに涼しげな顔してあの笑顔見せるの。
あ、私、この顔好き………
キラキラして真っ白な歯が光る。
まるで子供みたいな屈託のない笑顔。
心が浄化されていく感覚。
そしてその後の、
普段は見せない違う視線。
この目に捕まったら……動けなくなる。
「ズルいです……そんなに見つめられたら我慢出来なくなります」
ハッとした。
ヤバっ……そんなに見てた!?
咄嗟に目をそらす。
近付いてくる足音。
後ずさりするも足がもつれて後ろに倒れそうになった。
軽々と引き寄せられ目の前には彼の顔…!!
「ご、ごめん…」
近い……近過ぎる……!!
背中についてる大きな手……
なかなか離れない。
ずっとこっち見てる。
目合わせられないってば。
「僕の気持ちは本当です、嘘は1つもありません」
何なの?ストレート過ぎるでしょ。
既婚者であること普通にスルーされてるよね?
「さ、さすが帰国子女だね…」
アプローチが大胆且つ強引。
あっちの国じゃ普通なのかも知れないけどさ……
「それ、どういう意味ですか?まさか向こうでも僕こんな人間だと思われてます?」
「うん……」
ほら来た壁ドン…!
さり気なくするの日本男児じゃないから…!
ひゃっ…!更に顔近い…!
「そんなんじゃないです……僕も初めてで正直戸惑ってます。こんなに想いを口にしてしまうほど余裕なくて自分でも困ります」