不埒に淫らで背徳な恋
第1章 【心の歪み、気付いてる?】
え、何だろう……?
フワッと懐に入ってきて居座る感じ。
間違いなくペース乱されてるんだけど不思議なほど嫌じゃない。
「頑張って仕事覚えて、畠中チーフのこと今よりもっと楽にしてみせます…!だから、その時はちゃんと僕のこと見てください」
「えっ…!?」
単なる仕事に対する意気込み宣言かと思いきや最後のはちょっと意味が違うよね!?
手を握られて言われると絶対そういう意味だしリアクションに困る。
こんなキラキラした目でストレートに言わなくても。
こんな誘いはいつもなら難なくクリアしてきた。
今だってスルー出来るはずなのに、この私が気迫負けしてる…!?
「と、とりあえず仕事頑張ろっか?」
「お願い聞いてくれますか?」
「な、何…?」
「営業成績No.1になれば僕とデートしてください」
「はぁ!?私、結婚してるんだよ!?」
「ダメ……ですか?」
ちょっと待って、何で私が泣かせてるみたいな空気になってんのよ。
言ってることめちゃくちゃだから。
しかも営業成績No.1だなんて……
「それって私を越えるってことだけどわかってて言ってるの?」
繰り返しの説明になるけど、
私は商品開発から営業も携わっている二足のわらじが武器だ。
この私に宣戦布告するなんて……身の程知らずめ。
「はい…!」
出たよ、今日一元気な返事。
満面の笑み。
グイグイ来る人は少し苦手なのに
この笑顔は嫌いじゃない。
心の奥がザワザワして落ち着かない感じ。
「これからビシバシと営業のノウハウ叩き込んであげるから覚悟しときなさいよ?」
「はい!」
「で、何調べてたの?」
「えっと……○○の………」
「ああ、それならこっちの棚にもっと前のやつあるから」
「はい!」
た、体育会系なのね……
だからなのか、すご……腕の筋肉。
近くでマジマジと見るとぷっくり血管見っけ!
「うわっ…!」
「あ、ごめん……つい」
浮き立つ血管に見惚れて人差し指で触ってしまった。
びっくりされて思わず引っ込める。
耳まで真っ赤な彼はその腕を差し出し「どうぞ」と言ってきた。