テキストサイズ

不埒に淫らで背徳な恋

第6章 【守るべきものがある人生は幸福ですか?】





良かった。
会わなかった。
チラッと営業課の前を通ったけどほとんど出払っていて居ない状態だったし、本社も忙しそうだった。




それでいい。
再会するには早過ぎる。
支社は違えど同じ会社だから会う機会はあるだろう。
ていうか来年の営業成績表に載るんだよなぁ。




思いっきり“佐久間瑠香”って。




おそらく佐野くんも載るだろう。
気付く……?気付くよねぇ。
元気にしてるかな。
笑って過ごせてるかな。




あの笑顔……好きだったな。




そう考えるのは野暮だよね。
本社に来ただけでこんなに意識しちゃってる。
会わなくてホッとした反面、
今の佐野くんをひと目みたい気持ちに駆られてるなんて。




ねぇ、何を糧にして仕事に精を出してるの…?




私のこと、忘れられた…?




もう何とも想ってない…?




あれから他の誰かを抱いた…?




私の残した爪痕、消えちゃってるよね…?




新しい道をちゃんと歩いて、前を向いているのならそれでいい。




もし他の誰かが今の佐野くんを支えてくれているのだとしたら感謝しなきゃ…だよね。




その人を大切にしてください。




もう佐野くんの人生を邪魔したりしないからね…?




安心して……?




そのままもっと上を目指して頑張って……




って、格好つけ過ぎかな?
ごめんね?
偉そうなこと言って、私はまだ全然ダメみたい。
キミに会うのが怖い。




時間は経つのに気持ちが追いついてない。
キミを思い出に出来てない。
今会っちゃったら…と思うだけで泣きそうになる。
弱いくせに人一倍強がりでごめん。




すぐに飛び込む勇気がなかった。
だってそうすればキミの価値を下げてしまう。
離婚したのもキミが絡んでると思われて、あるはずの未来が閉ざされるかも知れない。
そんなの私には耐えれなかった。




不貞行為は事実だから。
その事実を作ったのは他の誰でもなく私自身だ。
彼に逃げた…と言われても否定出来ない。
好きになった、本気になってしまった…など理由にならない。








ストーリーメニュー

TOPTOPへ