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不埒に淫らで背徳な恋

第7章 【愛欲に溺れるのは不修多羅ですか?】





次は月島くんの方が素っ頓狂な声を出した。




「終わった恋なの」




だからもうこれ以上聞かないで…とばかりに強がって微笑んでみせた。
「戸締まりするから」と席を立つ。
休憩ルームを出ようとしたその時。




私の心臓は本気で止まるんじゃないかと思うほど強く高鳴った。
勢いよく背後から抱き締められて動けない。
耳元にかかる月島くんの吐息が身体を一気に熱くする。




またもやパニック。
状況整理なんて出来る状態じゃない。
ドドド…と押し寄せる鼓動。
ちょっと待って……なんで?
名前を呼ぶ前に耳元で囁くから鳥肌が立つ。




「凄くありきたりなこと言うんで引かないで欲しいんですけど……僕じゃダメですか?僕だったらそんな顔させないです……ちゃんとマネージャー自身が終わらせないと前に進めないですよ?もう……僕を選んで」




「ちょっと……月島くん!?」




「さっきのキス……返していいですか?」




えっ!?と言う前に顎クイされてそのまま重なった。
頭の中真っ白……硬直状態。
それでも月島くんが本気のキスしてきてることは理解出来る。
ハッと我に返り身体を押し退けた。




「無理に忘れられないから困ってんの…!それを他の誰かで埋めようとも思わない……こんなの最低だよ」




やっと理性を取り戻したのかバツの悪そうな顔をしている。
力なく「すみません」と聞こえてきた。
仕方なく振り向いて月島くんを見上げる。




「私もごめん……でも今のはやり過ぎ」




「はい……」




「反省してる?」




「はい」




ヨシ…と無理やり納得させる。
行こうとしたらまたもや袖口をつまんで来た。




「え、まだ何かあるの…?」




「僕の気持ちはなかったことにするんですか…?」




「え……?」




今頃気付いた。
私が佐野くんと勘違いした理由。
月島くんは見た目は全然違うけど、優しい雰囲気は似てる。
そして何より、甘え上手なところ。
きっとそこが重なるんだ。




見つめられたままビクともしないこの身体は何と理由付ければ良いんだろうか。
持っていかれる前に距離を保たなきゃ。








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