テキストサイズ

不埒に淫らで背徳な恋

第7章 【愛欲に溺れるのは不修多羅ですか?】





「水を差すようですけど、僕の気持ちには気付いてますよね?曖昧に終わらせるつもりならキスした意味がありません」




キスした……意味!?
ちょっと言ってる意味わかんないんだけど。
今ここで答えろってこと!?




「って言ったら秒でフラれちゃいますかね?」




真剣だった顔がフニャッと崩れた。
え、冗談なの!?
ダメだ……完全に振り回されてる。




「この後ご飯でも……今日のお礼に」と言われたけど断った。
本気で疲れてる。
そしたらちゃっかり耳元で。




「でも考えといてくださいね?僕のこと」




退かない顔と至近距離で目が合う。
言われてばっかじゃ収まりつかないから言ってやった。




「考えとくよ、どう交わそうかなってね」




「うわ、そのうち交わせなくさせます」




その自信満々なとこも似ないでよ、ムカつく。




一歩…ニ歩と逆に追いつめてやる。
後ずさりする月島くんの胸をツンツンしながら壁際まで。




「ねぇ、さっきから上司のことからかい過ぎじゃない?あんなキスで熱くなっちゃった?」




ダークな私も見せておこうか。
開き直ってしまえばこっちのものだ。
動揺してるって思われたらこんなふうに立場が逆転してしまう。
上司ってワードを出して現実を叩きつけてやらなければ。




案の定たじろいでいる。
ネクタイ掴んで近くまで引き寄せたらびっくりして声も出ないでしょ。




「月島くんのキスは、ちょっと違うかな……だからもう次はないな」




フッと悪戯に笑い身体から離れる。
呆然とした月島くんを残し先に退社した。




ちゃんと伝わっていれば本望です。
わからなければ言葉で伝えるしかない。
濁すことは相手にも失礼なんだって心得ている。




なのに……月島くんとキスしちゃった。
しかも会社で。
佐野くんの時と一緒だけど決定的な違いは明らかだ。




私はこれからも一生、あれほど熱くなるキスは出来ないのかも。
身体の中心から疼く溶けるようなキス。




触れた瞬間、身体が拒否した。




だからきっと、これが自分に課した罰。




乗り越えようとするたびにこの問題に直面して強張らせる。








ストーリーメニュー

TOPTOPへ