不埒に淫らで背徳な恋
第7章 【愛欲に溺れるのは不修多羅ですか?】
そう、驚くほどに私たちは相性が良かった。
磁石のように惹かれ合った。
時間が経っても消えることはない。
この身体に残り続ける。
ねぇ、快くん………
代償ってそういうことなんだよね………
「おはようございます、マネージャー、早速打ち合わせ良いですか?」
誰よりも爽やかな笑顔でミーティングルームへ誘ってくる月島くん。
昨日言ったことあまり引きずってないみたいだね。
それはそれで助かる。
基本仕切りのドアはオープンしているオフィススタイル。
皆が居るデスクから一番遠いミーティングルームだと小さな会話は聞こえない。
商談時などはプライバシー保護の観点からパーテーションを遮断し曇らせるが、社内ミーティングはだいたいガラス張りで見通し良くしている。
だからどのルームに誰が居るのか一目瞭然というわけだ。
お互いパソコンを開き隣同士で座る。
当然昨日のプレゼン報告だと思ったが少し落としたトーンであたかもミーティングしているように見せかけて話してくる内容に度肝を抜かれる。
「昨日のアレ……結構傷付いたんですけど」
「アレって?」
二人してパスワードを打ち込み起動させている。
「ちゃんと本気でやればあんなキスじゃないです…」
「ふーん、無理やりだったもんねぇ…」
報告書がメールで送られてきた。
そう、たった今、隣のパソコンから。
「それは申し訳ないです…抑えきれなかったことは正直ガキっぽくて後悔してます」
「ふーん、で、何に傷付いたの?」
「次はないって……」
「当たり前でしょ」
「本気で言った訳じゃないですよね?」
昨日途中まで見ていた次回案の書類を再度手渡される。
目で追いながら会話を続けた。
「どこをどう考えたらその答えに辿り着くの?その辺月島くんは頭良いと思ったんだけどな〜」
書類から視線を彼に向けて同意を求める。
「恋愛に関しては貪欲なんで……いくらでもわからないフリ、出来ますよ?」
「じゃあ逆に聞くけど、キスしても…触れても…例えば一線を越えたとして、心までは手に入らないってはっきり言ってもわからないフリするの?それって無謀じゃない?」