不埒に淫らで背徳な恋
第8章 【本能のまま乱れ咲くのは愛と呼べるでしょうか?】
「本当にこのお店で良かったの?」
「はい!こういうところで一度飲んでみたかったんです」
何処に行くかは月島くんに任せたけど、お世辞にも小洒落たお店とは程遠い大衆居酒屋みたいなお店だ。
カウンターとテーブル席は2つだけと狭い。
赤ちょうちんが灯るお店に入ったのは初めてだ。
カウンター席に座っておしぼりを渡される。
「ここ、結構美味しいって有名なんですよ?特に焼き鳥が」
「そうなんだ?」
「あ…すみません、落ち着きませんか?」
「ううん、何もかも初めてで新鮮だよ?」
「良かった」
クシャっと笑う面影がどこか安心感を与えてくれる。
まずはお互いへの労いと企画の成功を祝っての乾杯。
言ってた通り焼き鳥が美味しい。
牛すじ煮込みやふろふき大根などどれもほっぺが落ちるほどだった。
久しぶりにお腹の底から笑ったかも知れない。
酔うと本当はよく喋るんだ、月島くん。
皆と飲んだ時はこんな感じじゃなかったのに話し出すと止まらない。
たったの2時間ほどで呂律が回らないほど出来上がってしまっている。
私も久しぶりに熱燗飲んじゃったけどまだほろ酔いくらいだ。
「もう一軒行きましょう」
「もうダメよ、ほら、お水飲んで。あ、垂れてるじゃない」
「うへ〜酔ってるマネージャー可愛いです」
「私より酔ってるくせに」
お会計を済ませてタクシーを呼ぶ前に住所を聞き出す。
ハイ、と財布を渡され中に入ってた免許証で運転手に住所を伝える。
この様子じゃ玄関まで送らなきゃな…と思った。
「次はラーメン食べましょう〜」
「うん、そうだね」
適当に受け答えしてたら肩に頭が乗ってきてそのまま爆睡し始めた。
仕方ない、着くまでは寝かせてあげるか。
「俺、本当にマネージャーと仕事出来て嬉しいんすよ…」
酔ったら「俺」って言うんだ…?
グラッと態勢が崩れかけたから慌てて支える。
手を回し再び自分の肩に頭を乗せた。
普通、こういうの男性が女性にするんだけどね。