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不埒に淫らで背徳な恋

第9章 【無い物ねだりの先には報復だけでしょうか?】





「さすがに買い過ぎたか?」




「食べきれません…」




「じゃあ、なくなるまで手伝う……一緒に食べよう」




それは私が今から言うかも知れない別れの言葉を遮る為に用意したセリフみたいだ。




テーブルの上に並べられたゼリーを見つめてる。
次に繋がる会話の糸口が見当たらずに沈黙が生まれてしまった。




そっと後ろから抱き締められる。




春樹さんの早い鼓動が背中から伝わってきて動けない。




「何で敬語に戻ってるの?」




静かな部屋に無機質な声。
え…?怒ってる…?
より一層強く抱き寄せられる腕の中で肩をすくめてた。
答えない私に身体を離し顔ごと向けられる。




見つめ合う瞳が揺れてしまう。




「勝手に距離を置くな」




「んっ……ん」




逃げられないように隙きも与えないほどの濃厚なキス。
ゆっくり正面に向かされ身体がくっつく。
抵抗……出来ない。
する資格もない。




激しく口内を犯されテーブルに手を付くほど押し倒されている。




「風邪っ…移しちゃう…!」




やっとのことで離れた唇にそう訴えても哀しみを煽るだけだった。
額を引っ付けて必死に我慢している様子が見てとれる。




「昨日は……瑠香からしてくれたよ?」




そう言われた瞬間、全身に電流が走ったかのように肩を持ち上げてしまった。




そうだ……やっぱりしたんだ。
夢じゃなく現実。
間違いなく罪を犯した。




「可愛かったぁ……高熱出ると瑠香、いつもああなの?」




「えっ…?」




「抑えるの必死だったんだからな?あの顔で僕のこと欲しい…は反則だ。風邪じゃなきゃ間違いなく襲ってたぞ」




ウソ………嘘だ。
そんなはずはない。
はっきり覚えてる。
私の口は「快くん」と呼んでた。
春樹さんじゃない。




首を振って訂正する。




「違っ…!」




それを制止するように「まだキスされたいの?」と親指で唇を塞いできた。




「移ってたとしても本望だけどね?瑠香の風邪ならいつでも貰ってあげる」




もう何も言えない。
そんな空気を出された。








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