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不埒に淫らで背徳な恋

第9章 【無い物ねだりの先には報復だけでしょうか?】





「ほら、せっかく買って来たから食べて薬飲んだら早く横になれ」




「はい……あ、うん」




適当にリンゴ味を選んで口に運ぶ。
残念ながら全部は食べきれなかった。
無理やり薬を流し込んでベットに入る。




優しく髪を撫でられ「おやすみ」と前髪にキスを落とされた。




「おやすみなさい…」




体力的に話の続きはまた今度にしようと思った。
手を握られ揺れる瞳が彷徨う。




そっとゆっくり閉じて寝ているフリはわざとらしいかな。
まだ本調子ではないからすぐ眠気が襲ってくるのも事実で。
後どうか、春樹さんに移ってませんように。




静かに離れていく気配は音を立てないように電気を消し、玄関から出て行った。
鍵がポストに入って目を開けた。
真っ暗な部屋で起き上がり頭を抱える。




このまま…という訳にはいかないよ。
これ以上甘えられない。
ケジメ……つけなければ。









何の成長もしていない。
佐野くんに重ねて見るのはこれで2回目。
もう重症だ。
自分が不誠実過ぎて嫌になる。




この歳で忘れられない人が居てずっと先に進めないなんて終わってる。
よく元カレが忘れられない…なんて聞くけど、そもそも私と佐野くんは付き合ってたんだろうか。




好きだと伝えたけど私は不倫中だった。




そうか、こういう時は以前していた不倫相手が忘れられない…と言うのか。




妙に納得はいくが聞こえが悪い。
いずれにしても最悪なのは私。
手に入れられない相手にこれからもずっと焦がれていくのだ。
自ら手放して……震えて動けない。




「助けて………」




ベットにもたれて膝を抱える。
こうして自分を抱き締めることしか出来ないの…?
苦しい……胸が痛い………
私がそう思うことは許されないことなの…?




音に反応し起き上がる身体。




明かりはなくとも慣れたように前へ進む。
扉を開けて外からの蛍光灯の光が頬を照らした。




それを遮るように立つ影。
やがて大きな手のひらが私の頬に触れ視線を仰ぐ。
ほのかに香る優しいフローラルの香り。
きちっと締まったネクタイ姿は大きな商談を終えて来たのだろう。




ゆっくり中へ足を進め扉が閉まる。




目が合った瞬間から何が起きるのか理解出来た。








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