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不埒に淫らで背徳な恋

第10章 【不埒に淫らで背徳な愛なら許されるのでしょうか?】





緊迫した空気。
目を逸らして前を見る勇気はない。
答えてくれと祈る目つき。
そっと頬にかかる手に触れた。




答えなくちゃダメですか?




それってズルくない?保険みたいで。
自信ないならそう言ってください。
相手に言わせて得る安心は本物じゃないです。
自己満足に過ぎません。




だから私から彼にキスをした。
啄むだけのキス。
そっと離れて至近距離でこう答えるの。




「それは春樹さん次第です」




一瞬顔色が変わった気がした。
とんだビッチとでも思われているだろうか。




「え、俺たちって婚約してたんじゃなかった?」




「してますね……でも籍は入れてない」




「つまり、まだ自由の身ってことだね」




「お互い、見極める期間だと思います……特に私は一度失敗してるので」




「まだ完全に手に入ってないんだね、わかってたけど」




手に入れるのは簡単なようで難しい。
思い通りになんかならない。




結婚を前提としたお付き合いだけど
明日にはどうなってるのかわからない。
人の気持ちなんてどうとでも変わる。
もしかしたらこの車を降りる頃にはもう……なんてこともあるかも知れない。




いつもそう。
私はこんなふうに相手を試す。
それで去っていくならそこまでの関係性だったと追いもしない。
でも決して来る者拒まず…ではない。
去るもの追わず…なだけ。




どの立場で言ってんだって思われるかもだけど、ずっとそうしてきたから直しようがない。




頭の中が私でいっぱいになればいい。
私を想い、熱くなって、嫉妬心に狂って、独占欲に駆り立てられればいい。
甘い蜜に誘われて引っ掛かってきた獲物なら確実に落としてみせる。




学生時代からこんな感じだったことを思い出す。
社会人になった頃にはもう結婚を意識していたから封印していたけど。




「今日はこのまま帰るつもりだったけど、やっぱり寄っていい?」




家の前で停車したけど春樹さんは私の手を握り締めたまま離してくれそうにない。
言われなくてもわかる。
キミを手に入れたい……って瞳が言ってる。




「え、でも部屋散らかってるし…」








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