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不埒に淫らで背徳な恋

第10章 【不埒に淫らで背徳な愛なら許されるのでしょうか?】





一度失敗してるからって究極の逃げ文句だと思う。
ただ本気になれないだけ。
一線を越えても何も変わらなかった。
むしろ寄り濃くなった。
悪い結果にね。




それでも一緒に居るのは卑怯でしょうか。
何を守りたいんでしょうか。
適度な温もりに甘えて抜け出せなくなっているだけです。
ただただ、独りになるのが怖いだけなのでしょう。




私はまだわかっていなかった。




どんなに足掻いても結果は同じだったということに。




都合良く目を逸らしてゆらゆらと浮遊していたのかも知れません。











(出張終わるまでは会えないかも)




こちらの仕事内容もわかってくれているのでその辺は他の人よりも理解力はある方だと思う。
実際、想像以上に忙しくて目まぐるしい日々を送っていた。




家には本当寝に帰るだけの繁忙期だ。




キャリーバッグ片手に福岡へと立つ。
一泊二日だけどホテルに戻っても仕事が山積みだから気が滅入る。
新人研修の合間に取引先と電話対応するくらい追われていた。




それは紛れもなく後輩がちゃんと育っていて新規の仕事をバンバン取ってくるようになったからだ。
なるべく大きな仕事はやらせるようにして手が空けば手伝う形を取っている。




「佐久間さん忙しそうね」




「はい……お陰様で」




講師仲間にも言われる始末。
やっとの思いでトイレに行けた矢先、ハンカチで手を拭いていると廊下側から慌てたように走りながら2〜3人ほどの話し声が聞こえてきた。
声からして男性に間違いない。




いそいそと駆け抜けていく足音と共に耳に飛び込んできた会話に私はその場で石のように固まり動けなくなってしまった。




「今日営業の佐野が帰って来るらしいぜ」
「佐野ってニューヨーク飛び回ってるあの佐野!?」
「そうそう、急遽帰国っつーからまたデカイ案件片付けて来たんじゃない?」
「マジか!だから女子たちが朝から騒いでたのか」
「あー、これで全部持ってかれるな」





確かに私の耳には「佐野」と聞こえた。
間違いじゃないよね…?
本社の佐野っていったらやっぱりそうだよね…?
帰って来る…?今日…?









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