不埒に淫らで背徳な恋
第11章 【最終章 背徳没倫〜人の道から外れ、道徳に反する〜】
空港に降り立つ。
寒さに身震いする。
やっぱりこっちの方が寒いや。
荷物を持ちエスカレーターを上ると目の前に立ち止まる人影。
「あ………」
「おかえり、瑠香」
優しい笑顔で出迎えてくれたのは黒でシックに決めた春樹さん。
当たり前のように荷物を持ってくれる。
お疲れ様…と前髪にキスする仕草もスマートで何の落ち度もない。
「えっと……今日仕事じゃ?」
「大事な彼女が帰って来るのに!?俺は迎えにも行けない彼氏なの?時間は作るものだよ」
ぐうの音も出ない。
遠慮がちに笑う。
「家まで送るよ」と背中に手が触れる。
反射的に避けてしまった。
あ……この態度はヤバい。
変な空気が流れる。
「でも……一旦会社に戻らないと」
春樹さんの距離感に戸惑ってばかりだ。
意識し過ぎだよ、自分。
両手で頬を包まれわざと視線を合わせてくる。
「おい、俺は出張帰りに会社に直行させるようなブラック企業と太い契約結んでるのか?休めるときに休め、俺から言っとくから」
「あ、いや…これは自主的に…なんで」
「だったら尚更だ。今日一日は休んでろ」
「はい……」
断れそうもない。
二人きりになるの避けても仕方ないよね。
まさか迎えに来てるなんて思わなかった。
もしもあのまま佐野くんと居ることを選択していたら…と思うだけで変な汗が出た。
一番最悪なケースで裏切ってることは確かなんだから逃げちゃダメだ。
でもどのタイミングで…?
今……?
無言で手を握られ歩き出す。
躊躇いがちに止まるとグッと強く握り引っ張られるように歩いた。
きっともう気付いてる。
こっち見ないもん。
駐車場に停めてあるロールスロイス。
助手席を開けられた瞬間に顔を上げたが「とりあえず乗って」と促され口を閉じた。
運転席に乗った横顔は何を考えているかよめない。
どう切り出すかで頭がいっぱいになっていたら手を引かれ強引に唇が重なる。
一瞬の隙きをつかれての事態に思考回路が追いつかなくて窓にまで押し倒されていた。
「春樹…さんっ」
「喋んないで」
「っつ……!」