不埒に淫らで背徳な恋
第11章 【最終章 背徳没倫〜人の道から外れ、道徳に反する〜】
まだ玄関に立ったままの春樹さんを振り返り向かい合った。
まさか振り返るとは思わなかったのか、少し動揺した様子で私を見ている。
今から最低なことするから……本当にごめんね。
膝をつき、頭を床につけた。
「ごめんなさい……婚約を解消させてください」
「よせよ、こんな…っ」
腕から抱えられ立たされる。
もう顔見れないの……首を振りまた土下座する。
「私……最低だから……うぅ……もう見限ってください」
「最低って……抱かれたのか?あいつに」
嗚咽に混じって静かな怒りに満ちた声。
肩を震わせながら泣いちゃいけないと奮い立たせていたら腕を捕まれ「答えろ!」と揺らされた。
言わなくとも理解したんだろう。
視線を外され力なく座り込む。
「ごめんなさい……」
「嫌だ……俺は別れない」
「彼が好きなの…!もうどうしようもないくらい好き……忘れられないの」
「わかってるよ…!わかってて付き合ったんだ…!だけど俺だって好きなんだよお前が……簡単に諦められるわけないだろ」
「本当にごめんなさい……もう一緒に居れません」
消え入りそうな声を振り絞る。
こんな哀れで汚い私をまだ抱き寄せるとか優し過ぎるよ。
その手で殴られてもおかしくないのに。
「バカ言うな…!冷静になれよ、な?」
違う……取り乱してるわけじゃない。
どう言ったら伝わるのか。
どれも傷付ける言葉ばかりで胸が痛い。
いや、痛んでる場合じゃない。
一番傷付けることしたくせに………
嫌われて当然なのに………
「なぁ、もう俺にしろよ……俺がお前を幸せにしたいんだ。他の奴に渡したくない…」
頬に触れる手は溢れる涙を拭ってくれている。
目を伏せたら「俺を見ろ」と言われた。
「全部受け止める。許すから……俺を手放すな」
「そんなのっ……ダメ」
「ダメじゃない…!それでも俺はお前と一緒に居たいんだ……頼む、結婚してくれ」
嘘………望んだ……展開じゃない。
なん…で……?
なんで春樹さんが頭を下げてるの…?
私の手を掴んで肩を震わせながら嗚咽混じりに「頼む…」って。