
不埒に淫らで背徳な恋
第11章 【最終章 背徳没倫〜人の道から外れ、道徳に反する〜】
春樹さんならすぐ他に、もっとお似合いの一途に想ってくれる素敵な人が見つかるはずだ。
私じゃダメ……不幸にしてしまう。
ううん、もうしてる。
あのホワイトデザインの小山春樹が……
私ごときで取り乱したらダメだよ。
「出来ません……出来ません、ごめんなさい」
こんなことならいっそ嫌われた方がマシなのに。
憎まれた方がどんなに楽か。
嫌いになったわけじゃない別れはこんなに張り裂けるものなんだね。
それでも私が快くんを選ぶのは、そこに全ての答えが揃っていたから。
身も心も、快くん以外はダメなんだって思い知った。
ここでまた蓋をしてしまえば一生後悔する。
「初めてなんだよ……こんな好きになったの、瑠香じゃないと俺…」
肩に頭が乗ってきた。
すすり泣く音がすぐ傍で聞こえる。
春樹さんは………
小山社長は私が入社した時からずっと声をかけ続けてきてくれた。
勿論、遊び人なことは周知の上だったし最初は軽く流してた。
それでも、仕事で悩んだり壁にぶち当たった時なんかはいつも笑わせてくれてたし気にかけてもらっていた。
それにどれだけ救われていたか。
正直、コロッといってしまいそうになったことは何度かある。
当たり前のように口説いてくる誘いに乗ってしまいそうになってた。
いつも近くに居て時々冷たくあしらったりしてたけど、どんな私でもちゃんと真正面から受け止めてくれて温かかったんだよ。
「好きだ………瑠香」
「好きになってもらう資格ないよ…」
「ずっと好きだ……何があってもこの気持ちは変わらないから」
「私じゃ春樹さんを幸せに出来ない…」
「一緒に居てくれるだけでいい」
「出来ない…」
「俺の隣に居ろよ」
声にならず首を横に振った。
手元に落ちていた脱がされたコートのポケットから出した婚約指輪。
もう着けれないと返そうとしたのに再び強引に重ねられた唇。
頭を押さえられ抵抗すら出来ない。
ううん、もう抵抗出来ないんじゃなくてしない。
どんな仕打ちも……別れてくれるなら受け止めるしかないと思った。
