不埒に淫らで背徳な恋
第12章 【エピローグ】
「えっ!?快くん!?」
マスク姿で会社の前に佇む姿。
中には入らず待っていてくれたのには何か理由でもあるのだろう。
退社する直前あたりで一通のメールが入っていた。
(会いたい)
まさか来てるなんて思わなかった。
福岡からわざわざ!?
サプライズ…?
ううん、何か雰囲気で違うとわかる。
他の社員はもう退社した後。
駆け寄り手を握る。
微笑んでくれたけどどこか元気がない…?
「どうしたの?」
「お疲れ様」
「うん……いつから待ってたの?」
「さっき着いたとこ」
「来てるとは思わなかった…」
「うん……ごめん」
「風邪…?」
何も言わず首を振る。
違うならどうしたの?
「謝罪……してきた」
「謝罪?」
「瑠香さんのこと奪っちゃったから」
「え…?まさか小山社長のところ!?」
「うん……ニューヨークに発たれる前に間に合って良かった」
そっか……出発はまだだったんだね。
ニューヨーク行きを耳にして快くんも居ても立っても居られなくなったんだろう。
あっちに行っちゃえば当分会えなくなるから。
そっと胸に頭を預ける。
「私こそごめん…そんなことまでさせて」
うちにとってなくちゃならない取引先だから快くんも責任感じたんだよね。
顔見知りだし余計に。
「大事にしますって約束してきた…」
「うん…」
「殴られちゃったけど」
「えっ!?」
思わず顔を上げてマスクをずらす。
あ………唇、怪我してる。
切れてるところから血が滲んでる。
「心配しないで…?これは男の勲章だから。認めてもらえたよ?」
「バカ……痛かったでしょ」
「絶対に幸せにしないと奪いに行くって言われたから僕は死んでも瑠香さんを離さない」
傷口じゃない方に触れるだけのキスをした。
人が居るところでこんなこと……
しかも会社の前で有り得ない……?
仕方ないじゃない。
快くんがそうさせるんだもん。
失いたくない……焦らせる。
身体が勝手に動いた。
そっと抱き締める。
「瑠香さん………連れてって」
「え…?」